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Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.81 )
日時: 2016/01/23 14:54
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

お久しぶりです。
しばらく更新できず、すみません。
今回は本編を進めていこうと思います!←

◇◇◇

40#選択

その感情は、ウルフにはよく分からないものだった。

シュガーと会うとき、心なしか心がはずむ。
それは、幼い頃の姉にもっていた愛とははた別の意味での愛で。

分からない、ではなかった。
人を愛することを怖がる心が、その感情を悟られないように自分に嘘をつき続けていただけで。

今思えば、あのときシュガーと出会ってからーー。

いや、やめよう。

今この感情を認めてしまえば、きっともう後戻りできない。
だからまだ、抗い続ける。


ーーそうしてしまえば、答えはもう、自分の中にあった。


◇◇◇

一瞬の瞑目のあと、握りしめられた方とは別の手で、リリーの手をつかんだ。

「姉ちゃん」

心をこめた短い単語。
親愛をこめたその響きに、リリーはーー否、『試験』は勝利を確信して、にやり、と頬をあげた。

だからこそ、次に訪れた衝撃は驚きでしかなかった。

「……ぁ、あ?」

ウルフにしっかりと握らせたはずのナイフは、『試験』の腹に突き刺さっていた。
痛みはない。ただ、悔しさは残った。そして、遅れて祝福する。

認めたのだ。『試験』の、敗北を。

だが、ウルフはというと、消えてしまったシュガーや男たちを必死の形相で探していた。
笑みがこぼれる。まさにウルフは自分達の思い通りの青年だ。
優しく、強く。そして何より、失うことの辛さを知っている。

この子ならきっと、あのお方を守るのにふさわしい人になれるはず。

そう確信した試験は、フーラは、ウルフの『心』の試験の突破に、判子をおしたのであった。

◇◇◇

覚悟を決めて過去を殺したのに、シュガーがどこにもいない。

「しゅうぅがああぁ!!!!?」

大声で叫びながら、走り回る。
我ながら、なんてバカなんだろうと思った。

これは試験。幻影だ。
現実ではありえない世界で、あのシュガーだって本物ではないのに。
そもそも、自分にシュガーを助ける権利なんてないはずだ。
心ない言葉で罵って、傷つけた。

ーーでも、ここで謝らないと、もっと酷い奴だ。

そんな思いをかかえながら、走って走って走り続けて。
いつの間にか、黒い空間をぬけ、あの純白の空間にいた。

◇◇◇

「おつかれさま」

白色の少女が、倒れるウルフの傍らにしゃがみこみ、微笑みを浮かべていた。

「あーー。あ!?おい、シュガーは…」

「だーいじょーぶ。ウルフっちの思ってる通り幻影だからねー」

フーラは己の短い髪をくるくると指にまきつけながら、楽しそうに話す。

「やっぱり、な。じゃ、じゃあ…」

「試験も合格。もう、言わせんなよ、ばか」

「今の会話でなんか照れることあったか!?」

ばしーん、と盛大にかたを叩かれ、思わずツッコミをいれる。

「というわけだし、早く帰ってしまえ。あんたの姫ちゃんも、まってるよ?」

「は?何言ってーー」

「ばいばいーーちゃんと、お守りしてね」

懇願すような囁きに、まゆをひそめてその言葉の真意を問いただそうとするが、意識はなにかにひきよせられていくように消えていく。
ウルフはそれに抗えず、本能のままに目をとじた。

『これからは、あなたにあげた愛を、あの子に捧げてあげてね。お姉ちゃんの、自慢の弟』

微かに懐かしい声がきこえた気がした。