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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君ヲ愛スル。 ( No.3 )
- 日時: 2015/09/17 20:30
- 名前: 氷優。 ◆oR8MhqCGDo (ID: UIcegVGm)
【第1章 彼と大雨。】
激しく降る雨の滴が、ビニール傘を伝った。
傘の先から落ちてくる滴に、最近冬服から夏服に代わった制服が濡れてゆく。
6月に入ったばかりのこの季節。午前中からずっと降り続ける雨には、うんざりだ。
少し前まで水彩絵の具で塗ったみたいに、瑞々しい水色をしていた空。そんな空が、いつの間にか灰色の分厚い雲に覆われるようになっていた。
私——咲椰 征は、その灰色の空と、この大雨のなか足を急がせ道行く人を交互に見ていた。
「……傘なんて、要らないかも。」
ぼそりと呟いて、私は傘を閉じた。
私の横を通り過ぎる人は皆、不思議そうな目で見てくる。まあ、当たり前だけど。
この叩き付けるような大雨のなか、持っているにも関わらず傘を閉じる馬鹿など、いないんだから。
それでも私はお構いなしに、歩き続けた。
胸下辺りまでの黒髪はびしょ濡れ。制服も濡れて身体にくっついてくる。おまけにスニーカーは、私が歩く度水が入ってぐしょぐしょと音を出した。
ああ。この雨と一緒に、流れてしまいたい。
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