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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君ヲ愛スル。 ( No.12 )
- 日時: 2015/09/22 15:54
- 名前: 氷優。 ◆oR8MhqCGDo (ID: HyYTG4xk)
【第1章 彼と大雨。】
私は彼の家が何処にあるのか、分からなかったから。
彼の足が進む方へと自分の足も進ませて、自分より15センチ以上は高い彼の後を追った。
でも彼には分かりにくいけど優しさがあって、私が濡れないようにと私の方ばかりに傘を翳してくれていた。
ちらり、と横顔を見上げてみる。
先程濡れたせいで、彼の髪から落ちる水滴が彼の頬を滴り落ちる。
その濡れた髪と、肌と、ほんの少しだけ透けたカッターシャツが、彼の色っぽさを掻き立てた。
知らず知らずの内に、私の鼓動は速まっていくばかりである。こんなに艶っぽく、見た事のないような蒼柳 夏目が、隣にいるから。
「……もっと此方寄らないと、濡れるけど?」
「え、ああ……ありがとう、ね。」
「……別に。」
素っ気なく、素っ気なくだけど。
私の事を気遣ってくれているのは、痛い程伝わってくる。
その度に私の胸はきゅうって締め付けられて、彼という湖に呑み込まれてしまいそうだった。
暫くすると、私の指に冷たいものが触れた。
ぴくりとして手の方を見てみれば、彼の人差し指が私の人差し指を絡めていて。
彼なりの不器用な、〝手、繋ごう〟という言葉(メッセージ)なのだと、気付かされた。
だから私は、黙ったまま、彼を見上げないまま、彼の驚く程に冷たい手を、包み込むようにして握ってみた。
「……冷た、」
ぼそりと呟いた言葉は、彼にはきっと聞こえていない。
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