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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君ヲ愛スル。 ( No.13 )
- 日時: 2015/09/22 20:03
- 名前: 氷優。 ◆oR8MhqCGDo (ID: HyYTG4xk)
【第2章 彼と冷えた手。】
数分後、漸くとある一軒家へと辿り着いた。
屋根も壁も真っ黒。この家は、彼の印象とぴったりだなあなんて、ふと思ったりする。
彼の驚く程に冷えた手を軽く握り締めたまま、私は家の前で立ち止まっていた。なんだかさっきのやり取りから、彼の家に上がり込む自信がなかった。
さっきの彼は、まるで〝俺の領域に踏み込んでくるな〟とでも言っているようで。
誰とも関わろうとしないよう、分厚く固く高い壁に囲まれているようだったんだ。それなのに。
いきなり彼の家に飄々と上がり込むなんて、大した度胸がなきゃ出来ないと思う。私の場合は。
「……? 何してんの?」
「いや、上がり込んで良いのかと思いまして。」
「別に良いよ。良いから連れてきたんじゃん。」
早く来いよ、とでも急かすかのように、私の手を引っ張ってくる。
私はふぅ、と小さく溜め息を漏らした後、大人しく彼に着いて行く事にした。
相変わらず冷たいこの手は、先程よりも冷たさを増している。
見上げてみる横顔は飄々としているのに、手だけに緊張が走っているみたいだった。
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