コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 〜第二章 A to K③〜 ( No.11 )
- 日時: 2015/09/21 21:03
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
先生の忠告通り、授業は活気がなくて暇だった。あたしってもしかして暇人なのかな。
そう呟いたら、商五に暇人かつ肥満児って言われた。
「もう、商五ほんとに最低!」
ちゃんと運動してるから太ってなんかないのに。
うわぁほんとに商五最低だなと思いつつ、口元の小さな笑みを隠して、わたしはそっぽを向いた。
商五はほとんど話を聞かずに絵を描いているし、隣の席の男子も似たようなものだ。
もはや先生と三葉の、一対一の授業だった。
一対一か。やる気スイッチ、オフ。
三葉も先生も変な用語ばっかり使うから、何を言っているのか分からない。
その間、わたしは『ジョーカー』について考える。頭の中で、創士の台詞を反芻する。
前に商五が言っていた気がする。
むにゃむにゃ言っていたけど、とどのつまりジョーカーっていうのはつまりピエロとかクラウンとかジェスターとか、大道芸人のことで、人を楽しませたり笑わせたりする人のことなんだとか。
あとジョーカーは法律に関係なく行動できるとか、いろいろと姿を変化させるとか。
あと弟が言ってたけど、仮面ライダーだ、ダブリュー………に出てくるとかなんとか。
数羽並んだ小鳥たちが、かわいらしく騒いでいる。
ああ、あの中に混ざって飛んでいきたい。
でもそんなことを言ったら、どうせ商五に、頭は鳥レベルだから、いい感じに混ざれるんじゃねーの、とか言ってからかわれるんだろうな……。
まぁ、それでも別に良いんだけどね。
たくさん思い浮かべてみたけど、全然分からなかった。
じゃあこれはもう、商五に聞くしかないか。
「ねぇ商五」
「おう、機嫌直ったか」
頬杖をついたまま少し顔を上げる。
「もう……。なんでそんなにデリカシー無いの?」
「大丈夫、愛一にしかこんなデリカシーないこと言ってないから」
商五はあくまで適当に、わたしの言葉を受け流す。
「なんであたしだけイジめんの」
「だって、本気で怒らないし」
怒ると雰囲気が悪くなるから気を付けなさいっていうおばあちゃんの言いつけをちゃんと守ってるだけなのに。それが仇になっているなんて……。
「じゃあ本気で怒るよ?」
「おう、面白そうだな」
やっぱり顔をあげない。
「じゃあホントにキレるからね」
「知ってるか、そうやって顔のしわは増えていくんだぜ。顔のしわとしわを合わせて不幸せだ」
「うわぁ……やっぱり最低……で、そんなことはどうでもよくて」
「どうでもよくはねぇだろ。まぁいいか」
ここから本題に入る。
「ねぇ、ジョーカーになりたくないか、ってどういうこと?」
「……病院紹介するよ」
「…そうじゃなくて、創士が言ったの。ほら、商五は聞こえていなかったでしょ?」
ずっとノートをとりながら相づちを打っていた三葉の肩が、ぴくっと反応する。
「創士は、そうやって言ってたのか」
商五の眼の色が変わる。
「うん。間違いないと思う」
そして三葉は尋ねる。
「で、どういう意味なのよ、それ」
何秒かの沈黙。それから商五はまた視線をノートに戻して、また絵を描きはじめた。
「商五?」
「悪い。俺にもわかんねぇや」
商五は鉛筆を動かし続けながら、適当に言い放った。
「そう……」
三葉もそれ以上追及することはせずに、また板書を写し始めた。