コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

〜第二章 A to K②〜 ( No.9 )
日時: 2015/09/20 19:31
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)





■□■□■□DIAMOND





 突然、俺は飛び跳ねるようにその目を覚ました。
 呼吸は荒く、頭も痛い。何か悪い夢を見たのかもしれないが、全く覚えていない。
 綺麗に目が覚めてしまったので、もう一回寝ることはできそうにない。
 朝の五時二十分。いつもよりも一時間半くらい早い。


 することもなく、床に寝っ転がった。
「あぁ……瞬きすると一瞬だけ暗くなるんだなあ」
 長閑な世界。

 暇を持て余した俺の視線が、部屋中を駆ける。

 窓の向こうの曇り空、本棚に入ったお気に入りの漫画。漫画でも読もうかと思ったら、壁に張ったカレンダーが目に入った。

 のっそりと立ち上がってから、近寄って見てみれば、既に切られた先月分のカレンダーが、留め具の間に少し挟まっている。

 雲と富士山の絶景の下に、ずらりと数字が立ち並ぶ。


 五月は本当に何にも無いな。ゴールデンウィーク以外はパッとしない。しかも今年はゴールデンウィークが二つの三連休に分かれている。
 次のページをめくると、六月のカレンダーが載っている。雨と紫陽花。紫の上で転がる滴がとても綺麗だ。


 六月。体育祭と、あとは三葉の誕生日か……。

 ちなみに俺は八月五日です!

 こうやって誕生日アピールでもしておかないと、あいつら三人以外の友人は気が付かない。別にこれは祝ってほしいとかそういうアレじゃない。勘違いしないでいただきたい。

 次々にカレンダーをめくる。七月、八月、九月、十月、十一月、十二月。あとこれだけしかない紙を引きちぎるだけで、受験が来ちまうのか。

 じゃあもうカレンダーなんか六月でキープしてやんよ。そしたら暦の上では受験は来ない。俺神。最高。

 そういうやつが「私はいつまでも二十歳」とかのたまうんだろうな。哀れに過ぎるぜ。 どう足掻いても一たす一は二だし、二十たす一は二十一。これは揺るがない。
 下らないことを考えていたら眠気がしてきた。二度寝状態に入れそうだ。よし、二度寝するか。


 人の人生、八十年。

 そのうち睡眠時間は、合計で二十七年分とさえ言われている。
 二十七年も寝るのであれば、一、二時間追加したところで、まさに微々たる変化であり、ごく小さな分数は0とみなしても良いという論理によって、俺の潔白は証明される。

 さようなら、睡魔という名の妖怪よ。

 お前は束の間の暗闇のうちに消去されるのだ。
 そして眠らぬ苦労の民に、新たな根城を築くがいい。
 良い旅を。
 無意識のうちに、お祈りしています。お達者で。
 そう言っていつも、俺は目を閉じる。