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Re:   聖愛戦争。 <Chapter 1 更新中> ( No.30 )
日時: 2015/09/27 15:06
名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg (ID: HTruCSoB)

Chapter 2
<One Step, One Emotion>





「さあ根岸、君は俺に訊きたいことがあるんじゃないのかな?」

 次の日、教室に入るや否や速水がわざとらしく話を振ってきた。昨日三木さんを駅まで送っていった件について訊かれたがっているのは明らかだった。こいつのわざとらしい策略に乗るのは本意ではないが、あのことが気になっているのは事実だった。仕方ない。
「昨日、あの後どうだったんだよ」

 速水はにやりと笑い、もったいぶってから口を開く。
「良い匂いがしたなあ、三木さん」
「!?」

 良い匂い、だと。出会った初日に、そんなに至近距離まで接近したのかこいつは! 僕の脳裏にエロティックな場面がどかんと浮かんだ。煩悩まみれの速水の手が三木さんの柔らかそうな頬に触れると、彼女が顔を紅潮させながらもゆっくりと目を閉じ、二人の唇がゆっくりと────

「何勘違いしてんだよっ。言っとくけど、別に襲ったりしてないからな。ただメルアド交換しただけだ」
 肩を小突かれ、僕は我に帰った。目の前では速水が困惑した表情を浮かべている。どういうことだ?

「だって速水お前、三木さんと大人の関係に……」
 僕は思わず椅子から立ち上がった。

「ばーか。並んで歩いたときに、少しシャンプーの匂いがしただけだっつの」

「な、なあんだ、紛らわしい言い方しやがってー」
 高速で脈を打つ心臓。どうやら早合点しすぎたようだ。声は震え、顔はおろか耳まで赤くなっていることだろう。ただ、恥ずかしさとともに安心感もこみ上げてきたことは事実だ。

 これだから童貞は困るんだよなー、と速水は吐き捨てて他の友人のもとへ行こうとする。僕はそんな彼の背中に向かって、お前も童貞のくせにっ、と叫んだ。


 文化祭を二日後に控えた現在、放課後はその準備に追われるのが普通だ。ただし昨日は例外だったが。
 放課後になると、僕は真っ先に映画研究部の部室に向かった。三年生は実質引退しているので、文化祭の主力となるのは僕たちに二年生だ。本当はクラス劇の練習にも参加しないといけないのだけれど、僕は部活の展示の準備が忙しいと言って、あまり顔を出していない。

 映画研究部では週に一度集まって、部員が持ち寄った映画のDVDを鑑賞しており、今年の文化祭ではその中で特に部内の評判が高かった作品を部室で流す予定だ。部室は空き教室を間借りしているので、前日でなくても心置きなく準備が出来る。お人好しの部長が、日頃から顧問と良好な関係を築いているおかげだった。

 DVDを映すスクリーンとプロジェクターは明日用意することとして、今の僕たちの作業は上映作品のあらすじを模造紙にまとめることだった。映画研究部の部員は二年生と一年生が四人ずつなので、二人で一作品を担当する。僕の相手は部長だった。

 部屋の床に五十センチ四方の模造紙を広げる。そして昨日……じゃなくて一昨日までに彼と二人で考えた内容を鉛筆で下書きしていく。