コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 聖愛戦争。 <Chapter 2 更新中> ( No.38 )
- 日時: 2015/10/10 21:24
- 名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg (ID: /GGwJ7ib)
◇
文化祭の朝。校門をくぐると大きなアーチが設置されていた。ダンボールを繋ぎ合わせて色紙を貼っただけのものだけど、高さが三メートルほどあるのでそれなりの威圧感を感じた。「第四十二回山が丘高校文化祭」と書かれたその周りに、色とりどりの風船が連なるように取り付けられている。昨日私が下校するときはまだなかったのに。少し歩を進めると幾つかの模擬店が並んでいて、チョコレートの甘い匂いがした。チョコバナナでも作っているのだろう。何人かが買い物袋を持って、早足で横を通り過ぎていく。学校はいつもよりせわしなく、華やいでいた。
下駄箱を過ぎてすぐのところにパンフレットが平積みにされてあった。一部手に取ってぺらぺらとページをめくる。「体育館企画」と書かれたところで私の手は止まった。
「2−6 クラス劇 9:15〜10:00」
二年六組。速水くんのクラスか。体育館で全校集会が行われた後すぐだ。見ようかな。
「なーに見てんの、めぐちゃん!」
髪に息が掛かる。振り返ると、マリナがいた。これは面倒臭いことになりそうだ。私はさりげなくパンフレットを閉じる。
「いや、別に?」
「ふうん」
マリナがつまらなさそうに声のトーンを落とす。そして彼女の視線は、パンフレットの山に注がれた。
「あ、今日のパンフ置いてあるし」
そうして彼女はパンフレットを読み始めた。これはまずいな。案の定、しばらくしてピンクのネイルを光らせているその手は止まった。
「ほら! H氏のクラスが劇やるんだって! 知ってた!?」
私は曖昧に返事をした。知ってるよ、と心の中で呟く。
「てゆーかこれってこの後すぐじゃん!」
心の中を見透かされたみたいでどきりとする。
「あーそうなんだー。へー」
「ちょ、何その感じ! 彼氏のクラス劇があるっていうのに!」
「彼氏じゃないから」
「あ、ごめん。『未来の彼氏』ね!」
「気が早いってば」
「じゃあ、めぐちゃんは見に行かない系?」
「それは……」
別に、他の予定が入っているわけではない。家政科の出し物であるクラス展示は昨日までに準備が終わっているし模擬店を出すわけでもなく部活もやっていないので、今日は一日お客さん気分で楽しめばいいのだ。それに。
私は速水くんの顔を思い浮かべる。初めてメールアドレスを交換した男子のことが気にならないはずはない。
「……折角だし、行こうかな」