コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.3 )
- 日時: 2015/10/16 19:07
- 名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: uFFylp.1)
□ Episode 1 〜another side〜
〜蜂須 瑞貴 side〜
屋上から飛び降りた女の子が、今、目の前にいた。
その子の名前は、迫河 未散。一応、クラスメイトである。
屋上の手すりに迫河が座っていた時は、俺の方がパニックになっていて、不明瞭な何かを叫んでいた。
多分、死んでは駄目だとか、生きてとか、ありきたりなものだったと思う。
結局、迫河は屋上から飛び降りて、俺の目の前で死んだと思ったら、けろっと起き上がってしまったが。
到底この世の出来事とは思えなかった俺に、迫河は、1つの答えを出した。
「だって私、不死身だから。」と。
不死身、ふじみ、フジミ……。
「えっと、君は死なない、のか?」
すると迫河は、鼻で笑って、言い放つ。
「それ以外に何があるんだ。
不死身といったら、死なない以外に何かあるのか。」
……なんか申し訳ない気持ちになる。
「じゃあ、君は実は100歳とか生きてるのか?」
僕の言葉に、迫河の瞳は一瞬揺らいだ。
しかし、すぐにそれを消して、迫河はさっきの調子に戻った。
「……いいや。
私は正真正銘の16歳だよ。
私はここ数年で、不死身と分かったのだから。」
迫河は一旦、そこで言葉を切ると、俺から目線を外して、遠い何かを見つめる様な視線に変わる。
それがあまりにも、迫河に似合っているもんだから、俺は彼女を見入ってしまう。
「……人類が全て死んでしまっても、私だけ、生き続けなくてはならないんだ。
……悲しいよね、死にたくても死ねない私って。
本当に、悲しくて、愚かだ。」
言葉の続きを紡ぐ迫河は、不意に、俺の方へと視線を戻した。
その迫河の、夕日に晒された顔は、笑顔だった。
目の前の彼女の笑顔に、俺は目を奪われた。
悲しげで、儚い笑顔。
ガラスみたいに、とても綺麗で、壊れてしまいそうで。
どこか放って置けなくて、だから俺は、あんな事を口にしていたんだと思う。
「だったら、俺が不死身を治す方法を見つけるよ。」
迫河の眼をしっかりと見て、俺は思いの外大声で言ってしまった。
案の定、迫河は、しばらく呆とした眼をしていたが、発せられた言葉は、たった一言。
「……は?」
コレが、俺と迫河の出逢いだった。