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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *恋愛短編集* 私は今日前へ進む ( No.1 )
- 日時: 2015/10/15 19:45
- 名前: ほしまち (ID: as61U3WB)
第1話 * 3 文 字*
「こんちゃん一緒帰ろー」
「うん、ちょっと待って」
鞄を背負った友人が私の机の前にきた。
はやくはやく、と急かす友人の声に焦りながら私はなるべくゆっくり準備をする。
だって
「まつむらぁー」
少し低めの声に私の顔は自然とほころぶ。
私は平然を装い、振り返る。
「教科書、ありがと」
「うん」
「もう帰り?」
「うん、帰るよ」
「そっか、じゃあなー」
片手を上げて去っていく岸宮くんの後ろ姿に少し見とれる。
「ごめん、まいまい、おまたせ」
「ん、行こ」
通学鞄を肩にかけ、廊下へ出る。
その時もう一度、岸宮くんと目があった。
『 ば い ば い』
口パクでそう言われた。
私は思わずにやけてしまわないように下唇を噛んだ。
「ばいばい」
またね、っていえばよかった。
翌日、岸宮くんは交通事故で死んだ。
にわかに色ずいていた日常が愕然とモノトーンになる。
毎日同じことの繰り返し
ループ ループ ループ
岸宮くん、貴方は今何を想っていますか?
***
「それでは教科書59ページを開いてー」
先生の声にハッとする。
最近気づけばボーッとしている。
指定されたページで手を止めると、私の目がそれを捉えた。
荒っぽくて、アンバランスな、笑っちゃうようなそんな字。
この字を私は知っている。
そこに刻まれた3文字が涙で滲む。
『 す き だ』
ありがとう、岸宮くん。
私も好きでした。
さよなら、私の思い出
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松村 このみ MATSUMURA KONOMI
岸宮 蒼舞 KISHIMIYA SOHMA
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