コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *恋愛短編集* 私は今日前へ進む ( No.2 )
- 日時: 2015/10/16 22:27
- 名前: ほしまち (ID: as61U3WB)
第2話 *WAIT*
「あおにいちゃんっ」
「んーどうした真由」
「まゆねぇ、大きくなったらあおにいちゃんのお嫁さんになるのっ」
「おー嬉しいな。ありがとな、真由」
「うんっ!」
小さい頃から家が隣同士で家族ぐるみで仲良くしていた3つ年上のあおにいちゃん。
彼のお嫁さんになることがわたしの小さい頃の夢だった。
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「真由ーおばあちゃんから届いた果物、葵くんちにおすそわけしてきてー」
「えー」
ベッドの上でくつろいでいたわたしは不満そうな声を出す。
「えーじゃないの、ほらいく!」
「そんなの、お母さんが行けばいいじゃん」
「いま手が離せないの」
「もー」
しぶしぶとわたしは立ち上がる。
(会いたくないのに…)
林檎や梨が数個入った紙袋を持って家を出る。
隣の家のインターフォンを押そうとすると、
「真由?」と聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ、やっぱまゆじゃん。どうした?てか久しぶり」
いまわたしの目の前にはあいたくなかった人がいる。
「…あおにいちゃん。」
「わっりんご?うまそー」
「…はい。お母さんから。じゃ。」
紙袋を押し付けて踵を返して歩き出すと
「真由!」とまた呼び止められた。
「またな!」
「〜〜っ」
屈託のない笑顔でそう言われ、わたしはとっさに駆け出した。
家に入り、荒々しく部屋のドアを閉め、そのままドアにもたれてズルズルと座り込んだ。
(……ずるい。)
あおにいちゃんは、ずるい。
そうやってまたわたしを好きにさせる。
私があおにいちゃんを避けるようになったのは去年の今頃だった。
たまたま彼女と一緒にいるところを見てしまった。
その彼女は大人っぽくてガキな私とは違った。
悔しい、というより恥ずかしかった。
子供な自分自身を恥じ、あおにいちゃんをさけるようになった。
なのに、こうしてあおにいちゃんのことを少しでも欲しいと思ってしまう自分に腹がたつ。
「あぁもうだめだぁっ」
漫画が散らかったベッドにダイブする。
あなたに好きって伝えたい。
魔法使いに魔法をかけてもらうから、もう少し待って私にガラスの靴を履かせてね。
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浦上 真由 URAGAMI MAYU
藤下 葵 FUJISHITA AOI