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Re: サムライの恋 ( No.1 )
日時: 2015/10/25 01:19
名前: キャッツアイ (ID: Z5cmkimI)

相変わらず隣の家に住んでいた乙葉ちゃんは、ぼくにがみがみと文句を言っていた。彼女はそのしっかりした性格を最大限生かして、いきいきした理想的な大学生活を送っていた。

「また負けた?達也は強いのに。それでも男?悔しくないの?」

僕が剣道の試合に負けて帰ってくると、乙葉ちゃんは僕の代わりに僕以上に悔しがった。そしてお説教が始まる。この説教がまた長くて嫌だった。期待してくれているのはうれしいが、そんなこといわれても勝てないものは勝てないんだ。乙葉ちゃんとの関係は小さいころからずっとずっとこんな調子だったが、そうやって僕を見守ってくれている乙葉ちゃんを僕はいつの間にか好きになっていた。



就職活動の時期になり、僕は進路に悩む事となった。僕の大学は特にこれといって特徴のない下流の大学。周りのやつらは地方の会社に次々就職を決めていった。僕は正直自信がなかった。剣道しかとりえはないが、今の時代はコミュニケーション力がもてはやされていて必須条件だろう。万年いじめられっこの僕が戦力になれる会社なんてあるのだろうか。今が明治時代ならよかったなあ。そんな現実逃避をしていても、時間はどんどん過ぎていく。僕は灰色の毎日を過ごしていた。



僕の県には良い図書館があった。大型書店とコラボした県立図書館で中でコーヒーまで飲める。図書館にしては異例のファンがいて県外からわざわざ車でやってくる人たちまでいるのだ。

最近の僕の居場所は、その図書館だった。

履歴書を書いたり自己PRを考えたりして図書館に居座る。

その図書館に、あるかわいらしい小さい女の人がよく来るようになった。可愛いと言っても、年齢は30くらい。身長が小さくて、黒くて長い髪の毛。大人の女性だけど、童顔なので幼く見えるのだ。彼女は図書館に来ると、朝から晩までずっと調べ物をしている。頭のよさそうな人だった。本の内容をちらっと盗み見した事があった。「全国会社概要」「銃器取扱について」「自衛隊の仕事」何をしらべているのだろう。ちょっと危ない人かな。僕はそう思った。

ときどき、彼女に連れがいる事があった。背の高い美女で、見るからに体育会系。すらっとしたショートヘアの彼女と並ぶと、本の彼女はますます小さく見えてしまう。

ぼくは謎の美女たちを目の保養にしながら自分のエントリーシートを書き続ける毎日を送っていた。
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