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Re: アオゾラペダル ( No.10 )
日時: 2015/11/23 17:51
名前: 逢逶 (ID: Ft4.l7ID)

episode7
title 生意気

翌日、学校に行くなり手の負傷を心配する声が上がった。
嘘をつく罪悪感を感じながらも、大丈夫だよ、と明るく返事をする。

席に着くとレイが私の手をじっと見つめた。

「なに?」

私が尋ねても変わらず私の手を見つめていた。


「なに?」

私が再度尋ねるとレイは私の顔をじっと見て、ノートになにやら文字を書き始めた。


〝手を怪我したってのは嘘だろ〟




私は心臓がどくんと不吉な音を立てたのを聞いた。


「嘘じゃない…」



〝絵はもう描かないのかよ〟





「今は、怪我してるから描けないだけ。治ったら描く」

当たり前でしょ?と首を傾げる。



レイはしばらく私を見つめた後、ため息まじりに



「嘘が下手なんだな」


と呟いた。





言い返そうと思ったけどチャイムが鳴ってしまい、タイミングを失った。



私は絵を描くことは愚か、ペンを持つことすらできない。
誰かに奪われてしまったわけではない。
だから再び手に入れる方法が分からない。



三限目の体育。
唯一ペンを持たなくてもいい教科。
だけど参加できない。
私は重度の突き指なのだから。


「はぁ…」


一人体育座りで見学。
みんなはバスケ。
楽しそう…。


「ため息ばっかついてんなよ」

ん?

見上げると隣には私を見下ろすようにレイが立っていた。


「別に」

そっけなく返す。
だって、こいつ…、気付いちゃいそうじゃん。


「お前さ、友達作れよな」

私の隣に座って生意気な口をきく。


「余計なお世話ですー。てか、もう次試合じゃん?」


「あ、まじか」


真っ白な肌が輝く。
どこからどう見ても運動よりは勉強って感じ。

なのにレイの活躍で圧勝。




私は少し、レイが眩しい。



それが怖い。