コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: アオゾラペダル ( No.11 )
- 日時: 2015/11/25 20:56
- 名前: 逢逶 (ID: xV3zxjLd)
episode8
title 助け
不思議な世界さ
窓からこぼれる光で 真っ青に染まる
目に映る 満たされてゆく
僕の世界は…ah…また生まれてゆく
きっとこれからは 日常がパレット
月が微笑み 夜に虹がかける
また葉が揺れ 海が踊る
僕の世界は 色で溢れている
目を閉じたら 全てが愛おしく包まれる
I become the dazzling light to light up the future.
(私は未来を照らす眩い光になる)
KISSTILLの代表曲になった〝Freedom〟はお父さんが私の世界をモチーフに作詞作曲を手がけた。
私の今の世界はこの歌みたいに鮮やかじゃない。
歌詞カードをぼんやり見つめていると、隣の席の裕樹に頭をわしゃわしゃされた。
「んもー、ぐしゃぐしゃになっちゃったじゃん。直してよね」
ほら、と櫛を渡すと裕樹は渋々受け取って髪をとかしだした。
「あ!またイチャついてる!」
クラスの男子に茶化されても、それはいつものこと。
気にせず歌詞を読みこむ。
「なに見てるの?」
「んー?KISSTILLの。読んでみ」
「父ちゃんのか」
裕樹に歌詞カードを渡す。
私のお父さんが伊藤大和ってことは周知の事実。
「どう?」
「うん。良いよね、これ。言葉運びが繊細で。お前の父ちゃん何でもできるのな」
「まぁね」
「俺もそういう父ちゃん欲しかったかも」
「まったく、市長の息子がなに言ってるの」
「いや、だからさ。金じゃん、結局は。好きなことやってる人ってかっこいいよ」
裕樹は裕樹のお父さんを尊敬していない。
だからか、高価な物を買ったりましてや自慢したりなんてしない。
だから好き。
だから恋愛対象で見たことはない。
裕樹は尊敬できる人。
「ちょっと来い」
裕樹に手を引かれ教室を出た。
急に真面目な表情になるから少しだけ驚いた。
生徒相談室に連れて来られた。
「ちょっとどうしたの?」
裕樹が扉を閉めて、落ち着かなさそうに目を逸らす。
「あのさ…」
「うん」
「絵描けなくなっただろ」
私は目を見開いたまま動けなかった。
すぐに否定しなかったのは…
…誰かに助けて欲しかったから。