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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: アオゾラペダル ( No.7 )
- 日時: 2015/11/16 21:28
- 名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)
episode4
title 麻痺
「誰…?」
背は低め。
茶色く明るい髪に真っ白な肌。
女の子のような顔立ち。
私はその子に警戒しながらも尋ねた。
「…レイ」
「…何してるの?」
「学校見学。おれ、転入してきたんだ」
「何年生?」
「一年だけど」
「ふーん」
同学年かぁ。
もしかしたら同じクラスかも…?
ん?
一つ引っかかる。
鍵は無かったのにどうやってこの教室に入った…?
私が顔を凝視していると、レイはあぁ、と笑って鍵を指差した。
頷くと、
「窓から入ってきた」
と言った。
窓からって…、美術室は三階なんですけど。
「…どうやって?」
「さぁ?」
この人…、変人…?
はっ、と用事を思い出し棚からスケッチブックを取り出し、鉛筆を持った。
レイのことなんてどうでもいい。
無視しよう。
出来るだけいつも通りで。
描きたいものは沢山あるはずなのに…。
出てこない。
今まで一度も無かった感覚。
全身が麻痺したような…。
「…なに、これ」
私の声はレイには届いていなかったようで、
「へぇ、絵描くんだ?」
私の近くまで来て、スケッチブックを覗き込むレイ。
手も固まったように動かない。
今まではスラスラと描けていた。
それなりに自信はあるし、賞だってもらって来た。
顧問の先生にだって評価してもらっていたし、部員からも信頼されていた。
…絵が描けるから。
私が絵を描けなくなったら、みんな離れて行くだろう。
〝ちょっと可愛いからって調子乗るな!この無能が!〟
いつかの声が響く。
描かなければならない。
そう思うと今まで自由だった身体が一気に鎖で巻かれ、不自由になってしまった。
〝無能〟
私はスケッチブックと鉛筆を投げ捨てて美術室を飛び出した。
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