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Re: アオゾラペダル ( No.8 )
日時: 2015/11/16 21:27
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode5
title スランプ

誰もいない教室。
時計の秒針の音だけが響く。


全身が震える。

頭の中に駆け巡るのは、鈍い感覚とスランプという四字。





しばらくして、クラスメイトがやってきた。


「かすみー、はよ」


「おはよ」


精一杯の笑顔で挨拶した。




「ねぇ、聞いた?今日転入生来るらしいよ」


そんな声が聞こえてきた。



そういえばレイはまだ美術室にいるのだろうか。
私は美術室に忘れたリュックを取りに行くついでにレイの様子を見てこようと再び階段を登った。





しかし、レイはすでにいなかった。
代わりに鍵と置き手紙が机の上に置いてあった。


〝急に飛び出して行くなんておかしなやつだな〟



そう書かれていた。
だけど腹立たしい気持ちを持つことすらできなかった。


今は異常事態に頭がパンクしそうだ。




…どうしてあんな状態になったのだろうか。




教室に戻って、クラスメイトが次々と登校してきた。
みんな私は普通だと思っている。




「夏純、はよ」


隣の席の裕樹が微笑む。
私は今までで一番の下手くそな笑顔を裕樹に向けた。



がらっ、


前の扉が開いて担任がやってきた。



後ろにはレイがいた。



ざわめく教室。
女子のときめきの声が聞こえてくる。



「えー、今日から仲間が増えます。…自己紹介を」


「…ヨシザワ レイタロウ。よろしく」


先生は黒板のチョークで、

〝吉沢 零太郎〟

と大きく書いた。


レイが、零太郎になった瞬間である。
だけど零太郎ってなんだかしっくり来なくて、やっぱりレイに戻った。



「席は…」


先生が呟くと、女子の期待が溢れ出した。
手を合わせる女子や、隣の男子をどかそうとする女子。


「…あの人の隣がいいです」


レイが指差したのは私だった。




「でも、夏純の隣は俺です」

裕樹がきっぱりと言ったのに、レイは知らんぷりで先生に視線を向けている。


「…まぁ、三人でも良いんじゃないか?」



先生が困り気味に机を移動させて、私の隣は裕樹とレイになった。






「一時間目始めるぞ」


号令で始まった一時間目の数学。
得意科目。



全て忘れて、シャープペンシルを手に取った。


瞬間、





頭がぐらっと揺れて、ペンを落としてしまった。






同時に吐き気もして、


私はトイレに駆け込んだ。




「おい!どこ行くんだー?!」




先生の言葉にも答えられなかった。





私はスランプに陥ってしまった。