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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: アオゾラペダル ( No.9 )
- 日時: 2015/11/22 15:59
- 名前: 逢逶 (ID: KG6j5ysh)
episode6
title 鮮やか
「大丈夫か?」
「はい、少し吐き気がして」
「今日はもう帰った方がいい。家で安静にしなさい」
「はい」
私は早退することになった。
ペンすら持てない体になってしまった。
前はこの世界がどう見えていたっけ。
なんでこんなに汚く見えるのだろう。
先生に家まで送ってもらった。
「ありがとうございました」
「いいえ、安静にな」
「はい」
家に入ると、お母さんとお父さんが心配そうな顔で駆け寄ってきた。
「吐き気がするんでしょ?ちょっと横になりなさい」
私はソファーに寝転がった。
もう吐き気はしない。
あの一瞬だけ。
ペンを持った、一瞬だけ。
私はきちんと話すべきだと思い、体を起こした。
「お父さん、お母さん…。私、描けなくなっちゃった…」
私は全てを話した。
お父さんもお母さんもさみしそうな顔を必死に隠そうと、気丈に振舞おうとしてるけど上手く行かないみたい。
顔、引きつってるよ。
「先生には一応言っておこうな」
お父さんの言葉に私は必死に顔を横に振った。
「ダメだよ。私、絵を描かないといけないの。だから、絶対にダメ…」
お母さんは何かを言いかけたけど飲み込んで、私の頭を優しく撫でた。
「ペンも持てないなら大変だな…、隣の子にノートコピーさせてもらえばいいな。右手に包帯巻いて…、重度の突き指ってことにでもしておくか?」
私は頷いた。
眩く光る空。
夕暮れ時に名残惜しさすら感動に変えてしまう、宇宙。
きっとそうなんだろう。
ただ私の目に映る全てのものが、モノクロなだけ。
せめて世界が色鮮やかだったことは確かだと思いたい。
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