コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: となりの魔王さま ( No.2 )
- 日時: 2015/10/27 22:14
- 名前: クレープ (ID: 5kDSbOyc)
その2 魔王隣人
私の家はけして裕福ではないが貧しくもない、これといって特徴のない民家である。
強いて特徴をあげるとしたら、建っているのが辺境の山奥の村ということだ。辺境の村だから人が少なく、家と家がかなり離れている。自然が多いといえば聞こえはいいが、鹿や熊と出くわすなんてしょっちゅうであるし、回覧板を隣に渡すだけで三十分かかるため、けして良い特徴とは言えない。
父はふもとの街に出稼ぎへ行っているため、私と母の二人暮らしだ。
その母もいかにも主婦といったいい意味で平凡な人、私も特筆しようのない女子高生だ。ちなみに高校にかようのに一時間半かかる。
さて、これでわかってもらえただろう。
私はどこにでもいる女子高生、そして我が家も平凡な民家である。
けして私は勇者ではないし、住んでいる時代は中世でなく平成で、家も普通のセキスイハ○スなのだ。
———魔王が隣に引っ越してくるなど、
「あるわよ」
「あるんだ。あっちゃうんだ」
「だってここ、昔から魔王様とゆかりのある地じゃない?」
「ゆかるんだ。ゆかっちゃうんだ」
魔王襲来から一時間半後——————ふもと町へ買い出しに行ってきた(相変わらず大量である)母へ、魔王の事を一気にまくしたてると、母はこともなげにそう言った。
魔王様とゆかりのある地って。
魔王様のゆかりって。
この十六年間の人生の中で、自分の住んでる場所がそんな場所だなんて、はじめて聞いたんだけど。
てか、魔王様が実在したって事から知らなかったんだけど。
「そうかー、魔王さま来たんだ。ユミ、あとでごあいさつしてきなさい」
「え゛」
「お隣さんになるんだから、顔見知りになったほうがいいでしょ」
「お隣さん!?」
あら、魔王さま本人がいったんでしょう。
母は不思議そうな顔をして、きょとんと続ける。
お隣さんになる? そんなこと・・・。
・・・。
「・・・もしかして『余の隣に生をすえる者か』?」
「そうそれ」
えー、つまり・・・。
『そなたが余の隣に生をすえる者か・・・・・』
は、
『あなたが私のお隣さんですね』
で、
『よい・・・恒久の仲となるであろうそなたに、証としてこの糧を与えん』
は、
『となりの魔王です、よろしく。これからお世話になるので、これよかったらどうぞ』
か。
・・・現代語訳必要な隣人って。
————てなわけで、魔王さまがお隣に住むことになりました(自転車で三十分弱の)。