コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 樹海のエアガール【コメント募集中!】 ( No.12 )
- 日時: 2015/11/15 20:00
- 名前: シロマルJr. (ID: TM1He8zT)
5.動揺
「・・・ここまで来れば大丈夫かな?」
気がつくと私は、いや、私達は広場の前に来ていた。正直、体力には自信がない私は、すでに激しい息切れを起こしていた。だが凛花は私と反対で、体育の長距離走でも1,2を争うレベル。まだまだ余裕という感じだった。
とりあえず、凛花にお礼を言わなきゃ。
「ありがとう凛花、助かったよ」
普段、人と関わることが嫌いな私は、お礼なんて言ったことはないが、この時は意外と自然に言えた気がした。
「えへへ・・・実は私、中学の頃に空手道場に通ってたんだ。恥ずかしいから言ってなかったけど、全国大会で上位になったこともあるんだよ。まさかこんなところで役立つなんて・・・」
凛花が照れくさそうに頬を赤らめる。そうは言っても嬉しそうだ。
「そういえば、凛花って空手部に入ってないよね?それだけ実力があれば良い成績取れると思うけど」
「うん、私ね、親が仕事で忙しいの。毎日夜中に帰ってくるから、弟達の世話は私がやってる。だから、空手部には入れないんだ。道場もやめちゃった」
淡々と話していたが、なんだか悲しげな目をしていた。
「あ!勇樹君いたよ!」
凛花の指差した方を見ると、広場の隅で勇樹が佇んでいた。私達は気づかれぬように勇樹の近くに行くことにした。
「・・・僕はもうダメだ」
近くまで行くと、勇樹の声が聞こえた。誰かと話しているのだろうか?しかし、周りに人の気配は見られない。
ーー誰と話してるんだ?
「勇樹君、どうしたんだろう?」
凛花が私に問いかける。私は黙って勇樹の様子を見ていた。
「うん、今日もやられたよ。またあいつらだ。僕はいつか殺されるのかな?」
あいつらというのは、澪也達のことだろう。もっと話を聞く必要があるようだ。
しばらく話を聞いていると、
「うん、準備は整ったよ。あいつらに復讐しよう。夏休み、君の命日にさ。あいつらはその日、君と同じようにして死ぬんだ。楽しみだよね・・・じゃあ」
そこまで言うと、勇樹は広場を出て行った。私達には気づいていないようだ。
ーーいったい何だったんだろう?
「ねぇ、マナミちゃん」
凛花が話しかけてきた。なんだろうと耳を傾けると、
「勇樹君、霊感が強いって前に行ってたよね?」
・・・確かに言ってた。でもそれが何だというんだろう?すると次の瞬間、彼女は私が思いもしなかった事を口にした。
「・・・もしかして勇樹君、綾ちゃんと話してたんじゃないの?」
その表情はひどく怯えていて、声も震えていた。彼女が何を言おうとしているのかは、私にもなんとなく理解できた。