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Re: 樹海のエアガール【コメント募集中!】 ( No.16 )
日時: 2015/11/16 23:28
名前: シロマルJr. (ID: TM1He8zT)

6.中学時代

「・・・もしかして勇樹君、綾ちゃんと話してたんじゃないの?」
凛花の発したその言葉は、私の心にずーーんと響き渡った気がした。
彼女の言う綾ちゃんとは、おそらく久遠綾の事だろう。それ以外考えられなかった。
久遠綾、彼女は私の、いや、私達の中学時代の同級生だ。もう忘れてるかもしれないが、私の通う樹海高校は、高校と共に中学校も一緒にある。だから樹海中学校を卒業したら、必然的に附属の樹海高校に入学する事になるからね。
・・・すると急に、私の脳内に中学時代の日常の一角が思い浮かんだ。

ーーキーンコーンカーンコーン・・・6時間目の授業の終わりのチャイムだ。
「ねぇマナミ、今日この後時間ある?」
たった今話したこの女子こそ、久遠綾である。山吹色のショートカットに、ゆるいパーマをかけていて、大きな目が特徴だ。
「今から皆で、どこかでお茶しようと思うんだけど。ある程度人数は誘っといたから、マナミが来たら一応10人になるんだ。ね、一緒に行こうよ!」
綾はこのように、明るく活発な性格であり、誰にでも分け隔てなく話しかけていた。その持ち前の明るさと可愛らしい容姿で、クラスの女子からも、男子からも、さらには学校中の人気者だった。身長は155センチと、中学生にしては低めだが、彼女の存在感は、クラスの誰よりも大きかった。まさに私と正反対である。
「・・・行かない」
だけど彼女の事は、言っちゃ悪いが正直嫌いだった。理由はもちろん、メンドくさい事を嫌う私にとって彼女は、少々邪魔な存在だからだ。だから今もこうして、誘いを断ったのだ。
「えー?行かないの?しょうがないなー、それじゃあたし達だけで行こうか」
そう言って、綾とその他クラスメートは教室を出て行った。その中には、澪也や茂流も一緒にいた。
「マナミちゃん?行かなくてよかったの?」
凛花が私のそばに寄ってくる。凛花、心配せずともこれでいいのだよ。これで私は、何事もなく1日を終える事が出来るのだから。
その後は特に、何も起こる事はなかった。そう、その日は。

そして、日にちは8月7日、土曜日。夏休みに入っていた。
私達は当時、中学三年生だった。普通ならこの時期中3は、夏期講習だの宿題だのフライアウェイだの、色々忙しいのだが、私達はそのまま附属の高校に入るから、受験がどうこうわめかなくていいのだ。附属ってこういう時便利だよね。
その日、私達はクラスの皆で(私はほぼ無理やり)新宿に遊びに行った。もちろん、綾に凛花に澪也、茂流もいる。クラス外の人間も何人かいた。確かA組の亮、健人、正志だっけ。澪也と仲が良かった。
「さあ皆!今日は思い切りはしゃぐよー!!」
それに続き、皆が「おー!」と盛り上がる。彼女のムードメーカーぶりには、本当に感心する。まあ、別に羨ましくはないけど。
私達はその日、皆が思い思いに楽しんだ。私にとっても、不思議といい具合に羽を伸ばせたと思う。その場にいた全員、心から楽しそうだった。
ーーが、しかし、事件は起きてしまった。
それはその日の夜8時。もうすっかり暗くなっていた。あれほどにぎやかだった皆が、今ではしんと静まり返っている。その中の何人かは、心配そうな表情を浮かべていた。
ーーそう、綾が行方不明になってしまったのだ。
「・・・綾ちゃん、どうしたんだろう?今澪也達が探しに行ってるけど、連絡も全然取れないし・・・」
凛花も心配そうにしていた。しばらくすると、澪也が、その後から茂流、亮、正志、健人の順に戻ってきた。しかし、綾の姿は見えない。
「・・・綾ちゃんは?」
「見つからなかった。本当どこいったんだあいつは・・・」
凛花が質問し、澪也がそれに答える。本当にヤバい感じになってしまった。
私は正直、彼女は嫌いだ。でも、いないとこんなにも寂しいものなのか・・・。なぜかものすごく焦っているのが、自分でもよく分かった。
「・・・とりあえず、今日はもう遅いし帰るか?あいつのことだ。そのうち帰ってくるだろう」
茂流の意見にみんな「そうだな」と同意する。その日はそこで解散となった。

そして後日、生徒に向けて学校から緊急招集が伝達された。私は、妙に胸騒ぎがして、嫌な予感がしたのを覚えている。
ーーそして、その嫌な予感は的中した。
「えー皆さん、今日はとても残念なお知らせがあります。・・・心して聞いてください」
当時の私の担任が言った。私には、少し感情をこらえているように見えた。
「・・・昨日の新宿付近の広場で・・・久遠さんが亡くなっているのが見つかったそうです。昨夜に彼女の両親から、娘がまだ帰っていないと連絡があって、警察が捜索したところ・・・久遠さんの姿が遺体で見つかったそうです・・・」
そこで話は終わった。クラスの皆は、ひどく落ち込んでいた。涙ぐんでいる者もいた。私は突如、周りから人が消え去ったような感覚に襲われた。


回想はそこで終わった。今私達は、その広場にいる。
「・・・でも、復讐ってなんの事だろう?勇樹君や澪也達とも関係ありそうだし・・・」
そう、さっきからそれが気にかかっていた。綾の死と何か関係があるとは到底思えな・・・
ーーまさか!?
ふと思い出した。勇樹が澪也達にいじめられていたのを。あれは勇樹が澪也達の見てはいけない物を見てしまい、澪也達は、口止めのために勇樹をいじめていたとか?・・・そういえば、勇樹もさっき、いつもと違って言葉に詰まることなく、自分の意見もしっかり言っていた気がした。気になる事は山ほどあったが、
「とりあえず・・・今日は帰ろう?もう8時だよ?」
「あ、うん・・・」
ソラマナの一言で我に返る。慌ててスマホの電源を入れると、時刻は8時20を過ぎていた。もう帰らなければ。
「じゃあ、またねマナミちゃん」
「・・・うん、じゃあね」
そう言って凛花と別れた。帰ったらしっかり勇樹に謝らなくちゃいけないな。このセリフも何度目か分からないけど。
「早く帰らないと、ママとパパに怒られちゃうよ?早く早く!」
ソラマナポケットから顔を出して言う。無茶言うなよ。さっきさんざん走ったからもう体力は残ってないし。お前は本当に楽でいいよね・・・
心で悪態をつきながらも、私はなるべく全力ダッシュを意識していた。

そして私は明日、予想外の事実を知ることになる。(仮)