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Re: 樹海のエアガール【コメント募集中!】 ( No.17 )
日時: 2015/12/01 14:37
名前: シロマルJr. (ID: TM1He8zT)

7.三度目のニュース

ーーバタッ!
私は慌てた様子で、玄関のドアを開けた。
「あらマナミ、おかえり。勇樹なら帰ってきたわよ。探してくれてありがとう」
ママが飛び出してきた。本当だよ、大変だったんだから。
「勇樹、出かけるときには、父さんか母さんに伝えろって言わなかったか?」
リビングで、勇樹がパパに怒られている。当然だよ。こんな時間まで外にいるんだから。あと、うちの門限は夏の間は7時まで。その約束を破ったんだもん。
「とにかく、今日はもう寝なさい。疲れてるだろうし、明日行ったらもう夏休みなんでしょ?あと1日の辛抱よ」
そうだった、あさってから夏休みだったんだ。すっかり忘れてた。どうせ休むんだし、1日くらいオマケで休ませてくれてもいいのに。
「夏休み?いいなあ、私も休み欲しい〜!おいマナミ、私に夏休み半分よこせっ!!」
・・・いや無理だろ。何言ってんのアンタ。なんで私が夏休みの半分をアンタなんかにあげなきゃいけないのよ。本当に生意気な奴・・・。
「じゃあお休み」
私はいつも通り挨拶をした。まあいい、明日学校に行ったらもう休みなんだ。
「おうマナミ、勇樹を探しに行ってくれてたんだな。ありがとな。助かったよ」
パパが私に気付いて言った。説教はもう終わったんだろうか?
ーーそして私はベッドに入っていた。まただ、また勇樹に謝リ忘れてしまった。やはりあの事が気になる。綾と勇樹の事だ。あの二人、いや、実際は勇樹だけだったんだけど。
ーーまさか、凛花の言う通り勇樹があの場所で、綾と話していたというのか?いや、あり得ない。彼女は死んだんだ。生きている人間と話せるわけがない。幽霊にでもなったというのか?いや、あり得ない。非科学的だ。
ーーだめだ。これ以上考えても答えは出ない。
そう結論を出し、私は眠りについた。

7月16日 金曜日
「マナミーーーっ!朝だぞーーっ!!」
・・・うるさいなぁ、なんて起こし方だよ。起こしたのはもちろんソラマナである。思ったんだけど、朝から元気よくとか言うけど、全員が全員朝起きた瞬間から元気でいられると思う?少なくとも私は絶対無理。起きるときくらい、自分のペースでいさせてくれないだろうか。
ーーとか、そんな事を考えながら、私は教室に入った。
なんだかいつも以上に騒がしい。いつもうるさい茂流も、今日は人一倍騒いでいる。原因は分かってる。明日から夏休みだからなんだろう。
「っていうか、それが超おもしれーのよ。C組の渡辺いるじゃん?あいつが俺の運んでた荷物を持ってってくれるって言ったから、俺は荷物を渡したわけ。そしたらあいつ、いきなり転ぶんだぜ?何もないところで。注意力無さすぎかよ!」
そう言って、茂流が大笑いしている。周りの仲間たちもつられて笑う。何がそんなに笑えるのやら。
「みんなおはよう。HR始めるから早く席ついてー」
すると、教室に森山が入ってきた。いつもの眠そうな表情で。
っていうか、この光景もう飽きたんだけど。いつも眠そうだし、1日くらい普通なシャキッとした感じで入ってきてくれないだろうか?
「おっはよー森ちゃん、今日も眠そうだな!」
茂流が口を挟む。こいつは本当にいつでもどこでもうるさい。
「・・・今日は、皆さんに誠に残念なお知らせがあります。心して聞いてください」
茂流の言葉には関与せず、森山は続けた。ん?何か同じようなセリフを耳にした事がある気がするんだが、気のせいだろうか?
「えー・・・この間、うちの学校の女子高生2.3人が行方不明になったと言ったな?」
「ああ、こないだっていうか昨日だな。森ちゃん、寝なさすぎて記憶飛んじまったんじゃねーの?」
茂流の一言で、クラス内は爆笑の嵐になっていた。こないだ?昨日?そんな事どうでもーー
「静かにしろ!!笑い事じゃないんだ!!」
急に森山が怒鳴りだす。普段、怒鳴る事はほとんどない彼の突然の豹変に驚いたのか、教室内は一瞬で静かになった。私には、彼が何か感情を抑えているように見えてならなかった。
「・・・その3人が、新宿近くの広場で、遺体で見つかった・・・」
森山のその一言で、私の心は凍りついていた。いや、私だけじゃないはず、きっとクラスのみんながそう感じていたはずだ。
それから森山は、そのときの状況を詳しく説明してくれた。やっぱり何かおかしい。
私は知らぬ間に、激しい戦慄を覚えた。

それから何時間か経ち、昼休みの時間になった。私はいつも通り、自分の席でぼんやりしていた。今は、凛花と話をする気力もなかった。
死亡した女子生徒は、A組の柴山 、大澤、長谷川という生徒だった。3人とも私の中学時代のクラスメートだった。それぞれ個性はあったものの、3人とも明るい性格だったので、綾ととても仲が良かったのが印象に残っている。
「ねえマナミ」
ふと、ポケットから声がした。見ると、ソラマナがこちらに顔を向けていた。
「死んだ3人って、綾とかいう生徒と何か関係あったの?」
「・・・一応仲は良かったけど、何でそんな事を聞くの?」
「・・・いや、なんとなく?昨日凛花と何か話してたじゃん」
そういえばそうだった。気になることの一つだった。だが、今は横の例のバカが怯えたように震えてるのも気になっていた。
ーー何やってんだ。
心でそう思っていると、そのバカに澪也が話しかけていた。
「・・・茂流?そんな震えてどうしたんだ?」
「澪也! 別に、何もねえよ・・・」
ここで、昨日勇樹をいじめていた集団の中にいた、澪也と茂流が頭に浮かんだ。あれは何だったんだ?何かの間違いだったと信じたいが・・・
「・・・あいつだ」
・・・は?どうしたんだよ?あいつって誰なの?
「行方不明になって死んだ柴田達も、きっとあいつに殺されたんだ。俺らがあいつを、綾を・・・」
「おい、あの話はもうやめろって言ったよな?忘れたとは言わせねえぞ」
ーー急に澪也の声が低くなり、表情も険しくなっていた。さっきまではしっかり優等生の顔だったのに、今では獲物のシマウマを狙う、ライオンのような目をしている。
「あ・・・わりィ」
それっきり、茂流が喋り出すことはなかった。明らかに様子がおかしい。やっぱりこの二人がーー
「マナミちゃん、ちょっといい?」
「・・・凛花、どうしたの?」
私はなるべく、いつも彼女と接するのと同じように聞き返した。
「あの二人、何かおかしくない?」
やっぱり、凛花も気づいてたんだ。昨日の勇樹の事といい、彼女の観察力は、本当にすごいと思う。
そう思ったところで、授業開始のチャイムが鳴った。
すぐに教師が入ってきて、何事もないかのように授業を始めたが、多分、ていうか絶対集中できないと思う。教師も生徒も。