コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 樹海のエアガール【コメント募集中!】 ( No.18 )
- 日時: 2015/11/29 17:14
- 名前: シロマルJr. (ID: TM1He8zT)
8.どうしてこんなこと
ーー6時間目とHRの時間が終わった。
結局、1年B組の皆は、授業に全く集中できてなかった模様だった。私もその一人だった。
理由は決まっている。この学校の女子高生が行方不明になり、行方が分かった時には死亡していた事件があったからである。
ーーどうしてこんなことに・・・。
すると、「ピロリン」と軽快な電子音が鳴った。音の出所は、私のワンピースのポケットにあるスマホだった。
私はスマホを取り出し、メールの内容を確認した。そこには、誰が見ても驚くべき内容が書かれていた。
ーーRe: 未空マナミ
元気?
突然だけど、8月7日の夜8時に、緑広場に来てもらえる?
・・・何の日かって?まさか忘れた?そんなこと言わせないよ。
あの頃の3年C組の皆なら、嫌でも覚えてるはずだから。
じゃ、そういう事だからよろしく。
ーー以上がメールの内容だった。件名、差出人は書かれていない。一体誰からなんだろう?
私はしばらく、そのメールをじっと睨みつけていた。すると、
「は!?なんだよこのメール!?」
そう叫びながら教室に入り込んできたのは、学級委員の澪也と、お調子者の茂流だった。ちなみに今叫んだのはお調子者の方である。
「これじゃ誰が書いたのか分からねえよ」
澪也も言った。かなり動揺しているように見えた。彼がここまで動揺するのは珍しい。が、少しわざとらしく見えたのは気のせいだろうか?
「マナミちゃん、メール見た!?」
さらに、慌てた様子で凛花も教室に入ってきた。どうやら何人かには、私のと同じ内容のメールが届いているらしい。
私には、このメールの意味が分からなかった。
今日は早めに帰ろう。
そう思って、さっさと帰る事を決意したその時、
「・・・姉さん!」
背後から声が聞こえた。声の持ち主は、意外な事に勇樹だった。彼は息をぜえぜえ切らしながら、時代遅れの携帯電話を私に向けた。
「このメール・・・見た?」
勇樹の携帯には、私とほぼ同じ内容のメールが表示されていた。唯一違っていたのは、
ーーあなたの野望、一緒に叶えよう
メールの最後に、そう書かれていた事だ。野望とは何の事だろう?8月7日という日付も気になる。
「一回行ってみたら?緑広場に。何かわかるかもしれないよ?論より証拠って言うじゃん」
ーー冗談じゃない、私に何の関係があってそんなメンドくさいことしなきゃならないんだ。っていうか、そんな気になるなら自分で行ってこいよ。
・・・でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
何が起きてるのかは全く分からないが、なぜかそんな気がした。
「・・・姉さん?」
私は、何分間そこに立っていたんだろう。何を考えていたんだろう。勇樹が私を見つめている、周りのみんなが、私を不思議そうに一瞥して去っていく。そして、私はひとつ決心した。
ーー8月7日、緑広場に行こう。それで全部終わらせよう。
8月7日 土曜日
月日が経ち、気づけば私は緑広場の真ん中に立っていた。勇樹はまだ来ていない。この広場の中央には噴水がある。広場のシンボルで、ライトアップもする。
今の時刻は午後7時45分。メールに書いてあった時刻の15分前だ。
「マナミ、何か心当たりがあるの?」
よほど不安げな顔をしていたのか、ポケットの中でソラマナが言った。実は、心当たりは全くない事もない。あの後私は少し考えた。なぜか他人事じゃなさそうな気がしたからね。そして、考えに考えた結果、ある人物が頭に浮かんだ。
綾の事だ。この事はどうも彼女が関係してる気がしてならない。まぁ、これはあくまで私が心で思ってる事だから、ソラマナには分からないだろうけど・・・
「・・・もしかして綾の事?」
ーーなぜ分かった!?
前から不思議に思ってたんだけど、何かコイツ、人の心が読めるんだろうか?本当はソラマメなんかじゃなくて、もっと別の何かなんじゃないのか?
「・・・あのさソラマナ・・」
次の瞬間、私は全くの無意識で、ソラマナに話しかけていた。
「何?」
ソラマナは不思議そうに返事した。こうなったら後戻りはできない。面倒な事になる前に、一切合切聞き出してしまおう。
「前から気になってたんだけど・・」
そこまで言うと、「おーい!マナミちゃん!」別の声が聞こえた。声のした方を見ると、凛花が私の方に走ってきていた。その後からは勇樹も来ていた。
「お待たせ、待ち合わせ場所ここであってる?っていうか、待ち合わせって言っていいのかな?だって、誰からメール来たのか分かんないし・・」
そうだった。あのメールは差出人不明だったんだ。でもここで、もうすぐ全員集まる事は分かってる。もうすぐ全てが分かるんだ。多分。
「おーい、未空に早乙女ー!」
また違う声が聞こえた。そこには、澪也と茂流、さらにA組の亮、健人、正志も来ていた。これで、メールを受け取った全員が揃った。時刻は午後7時50分を過ぎていた。
「みんな、届いたメールだけど、どういう意味か分かったか?」
口を開いたのは澪也だった。いつもとなんら変わりない優等生の雰囲気だ。
「分かるわけないじゃん、差出人不明なんだもん。一体誰が書いたんだよ!?」
そう言ったのは茂流だ。きっとこの場にいる全員がそう思っているはずだろう。私もそう思っている。なかなか事が先に進まず、若干イラついていると、
「・・・あんたじゃないの?・・澪也」
ふと声が聞こえた。声の持ち主は、私の隣にいた凛花だった。その声は怒りに震えていた。
「はあ!?何で俺がこんな意味不明なメール書かなきゃならないんだよ!」
「だってそうでしょ!?あんた達が何やってたか、私知ってるんだから!ね、マナミちゃん!」
ちょ、勘弁してよ、私巻き込まないでよ。私を面倒事に巻き込まないで!
「・・何の事か、俺には全く分かんないんだけど?」
「そうだよ、澪也が何やったっていうんだよ!」
「とぼけないでよ!あんた達のせいで、勇樹君がどれだけ辛い思いしてきたと思ってるの?あんた達がいじめてたんでしょ?澪也、茂流、あと後ろの3人で。いつまでも優等生ぶってんじゃないわよ!」
何気にA組の連中の扱いがひどかった気がしたが、それはまあ置いておこうか。
「それで、メールで勇樹君を呼び出して、またいじめようとしてたんでしょ?まあ私達にメールが届いたのは、痛いミスだったわね。どうせあの日、綾ちゃんを殺したのだって・・」
「おい、あの話はするんじゃねえよ」
「ほら、本性出した。それって私がやりましたって言ってるようなものでしょ?メールを送ったのがあんたじゃなかったら、他に誰がやったっていうの!?」
凛花がそう言ったところで、長い口論は終わった。争い疲れたのか、誰も一言も喋らない。結局、メールは誰が送ったんだろう?
ーーーあたしだよ。
そうそう、そいつが送って・・・え!?
どこからか声が聞こえた。その高めの声から、今この場にいる人間とは考えにくい。
「誰だ!?」
茂流が叫ぶ。皆は慌てて声のした方を見上げた。それは、噴水のてっぺんを示していた。
そこには、うっすらと人影が座っているように見えた。だんだん人影がハッキリしてくる。そして、噴水のライトアップで、その実体が完全に見覚えのある人物になった。
「な・・、ありえねえ、どうしてこんな・・」
「・・嘘でしょ?何で・・」
155センチ程度の小柄な体格、山吹色でゆるくパーマをかけた短い髪、大きな目、その姿はどこからどう見ても、久遠綾に違いなかった。
「みんな来てくれたんだ。私の事覚えてる?」
久遠綾がそう言った。私はそっとスマホを起動した。現在時刻は、たった今午後8時になっていた。