コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 樹海のエアガール【コメント募集中!】 ( No.25 )
- 日時: 2015/11/25 01:01
- 名前: シロマルJr. (ID: TM1He8zT)
9.級友の逆襲
「みんな来てくれたんだ。あたしの事覚えてる?」
午後8時になり、ライトアップされた噴水に座って、綾らしき人物が言った。
正直私は、今目の前で何が起こっているのか、全くわからない。おそらく全員そうじゃないだろうか?
彼女は死んだはずだ。事故で1年前に。じゃあ目の前にいるこの綾は、一体何なんだろう?幽霊か何か?いや、ありえない、そんなものいるわけない。仮にそうだとしても、なんで私達には見えてるんだろう?まだ、誰も何も言えずにいた。
「唐突に聞くけど、今日が何の日か分かるよね?」
綾はそう言うと、噴水から飛び降りた。地上から噴水までの高さは、約5メートル程度だ。普通に考えて、人間がそんな場所から飛び降りたりなんてしたら、間違いなく大怪我するだろう。だが、肉体が存在しない彼女は、そんな心配は全くない。よって、何事もなく着地に成功した。
「あーあ、やっぱりだ。だーれも覚えちゃいない」
綾が呆れた様子で言う。そうそう、質問されてたんだ。でも、申し訳ないけど全く分かんない。シロマルJr.の誕生日とかくだらないものなら、今すぐに帰らせてもらおうか。(ちなみに僕の誕生日は5月です)
みんな答えが分からず、黙り込んでいると、
「まさか忘れた?そんな事言わせないよ。メールにも書いておいたけど、あの頃の3年C組のみんなは、いやでも覚えてるはずだし」
いや、私は答えは分かってるんだけど答えたくないだけ。メンドくさいし。
「あーもうしょーがないな!正解教えるよ。あたしの命日。覚えてない?あの日みんなで遊びに行ったじゃんか」
やっぱりそうだったかぁ。私天才アリガトウ。
「んでその日の夜8時、つまり1年前の今、私が行方不明になったじゃん」
「ああ、思い出したぞ!それで見つからないから、その日は解散って事になって・・」
「それよりあたし、どうして死んだと思う?」
茂流の言葉を無視して、綾は淡々と話し続けた。が、彼女が何かに激しく憤っている事は、なんとなく読めてきた。
「・・やめろ」
そう低くつぶやいたのは澪也だった。今までじっと黙ってたのに、急に話し始める。やっぱり何かおかしい。
「あれれー?何か心当たりでもあるのかなー?澪也くん」
すると、綾が澪也に向かって嫌味な笑顔を向けた。生前の明るい性格の彼女なら百パーしない表情だ。この二人の間に、何かあったんだろうか?
「そうだよね?まさか自分がクラスメートを殺したなんて知られたら、優等生キャラが台無しだもんね?」
ーーな・・!?
「そうだよ。あたしが死んだのは、この吉丸澪也に殺されたからなんだ」
ーー衝撃の一言だった。まさか澪也が、あの事件の原因だったなんて。私達の中に、嫌な沈黙が続いた。
「・・・違う、あれは・・」
「何が違うの?確かにあんたが直接殺したってわけじゃないけど、ほぼあんたが殺したようなもんでしょ?人の命奪っといて、よくそんな事が言えるよね」
一方的に綾が言葉で押していた。澪也がここまで追い詰められる所は見た事がない。
「・・・あのメールはお前が送ったのか?」
「そうだけど?」
「どうやってみんなに送ってたんだよ」
「え?普通にだよ。普通にケータイでメールを書いて送った。幽霊になってもちゃんと物は触れるんだよ。幽霊の生態は、死んだ人にしか分からないんだから」
そこまで言うと、こちらに向きを変えて、
「あんたもだよ、茂流。あんたも澪也と一緒にあたしを探してたんでしょ?」
「・・・おう」
「あの時、見つからなかったって言ってたけど、本当はその目でしっかり見たんでしょ?あたしが不良達にグルになってボコボコにされてるのを」
どうやら茂流に言っているらしい。それから、茂流は黙り込んでしまった。
つまりはこういう事。あの日、みんなで遊びに行きました。夜8時になりました。綾が行方不明になりました。澪也達が捜索に行きました。すると、澪也達は綾が不良達グループにリンチされてたのを目撃しました。彼らは、自分達が巻き込まれるのが怖くて、その場から逃げ出した、って事。
今こうしてる間にも、綾の話は止まらない。
「・・・マナミ」
すると、ポケットからソラマナが顔を出していた。何か言いたげな表情をして。
「・・・何?」
「マナミ、綾に何か言いたい事あるんじゃないの?」
ーーは?何言ってんのこいつは。何で私が綾と話さなきゃいけないんだ。
「は?別にないよ。なんでそんな事・・」
「嘘だね。絶対何かあるでしょ。私に分からないとでも思った?」
そんな事思ってない。何でこんな事聞くんだ、うっとうしい。
「あ、あなたソラマナでしょ。話は聞いてるよ。面白い形してるね」
急に綾が入ってきた。タイミングが全くつかめない。だから彼女は嫌いなんだ。
「面白いとは失礼な!!ただソラマメみたいな形してるだけじゃんか!」
いや、みたいなっていうか、まんまソラマメじゃん。っていうか、私を挟んでどうでもいい争いやめてもらえるかな?
ーーあれ?待って。今、話は聞いてるって・・・。
「・・・何かあるの?マナミちゃん?」
すると、さっきまでずっと黙っていた凛花が、初めて私に聞いた。凛花まで何言ってんの。
「いや、私は何も・・」
「・・・そうなの?ならいいけど」
そういうなり、彼女はまた黙り込んでしまった。綾は、今も澪也と口論を続けている。いつの間に戻ったんだ。あの二人、なんだかんだ言って仲が良いんじゃないだろうか?
すると私は、急に一つの気がかりな事が頭に浮かんだ。
ーー勇樹はどう思ってるんだろう?
それだけ気になった。その勇樹はというと、綾達が話しているのを横目に、いつも通り黙っていた。