コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 樹海のエアガール【コメント募集中!】 ( No.27 )
日時: 2015/11/29 22:19
名前: シロマルJr. (ID: TM1He8zT)

11.私の話

ーー私は一体何をしてるんだろう?
こんなメンドくさいこと、早く終われば良い、私に関わらずに終われば良いと思っていた。それが今は、自分でこの厄介事に終止符を打とうとしている。やっぱり最近、クラスメートが行方不明になったり、今ここで幽霊と話そうとしていたり、不可解な現象が起きたため、私の何かが変わり始めていた。っていうかジャンル違くない?何でコメディライト小説に幽霊とかが出てくるわけ?まあこればかりは、作者の設定ミスだからしょうがないけど。

ーーさあ、話を元に戻そうか。

私は目の前の綾に向かって、一歩、また一歩と歩みを進めていた。その場の全員が、驚いた様子でこちらをじっと見ていた。まあ、無理もないか。普通はありえない事が、今起こっているんだから。
「・・何?」
綾が私に声をかける。油断していたという表情だった。
「あんたさ、今、ここで澪也がいなくなれば解決するとでも思ってるわけ?」
正直、何を話したいのか私には分からなかった。が、自然に言葉が出てきた。頭で考える事なく、ごく自然に。
「そうだよ、さっきからずっと言ってるじゃん。あたしが死んだのは全部澪也が原因なんだもん。ここで澪也を殺して、全部終わらせる」
綾も言い返す。言ってる事は間違ってないと思うが、納得なんてできるわけない。
「それは違うよね?こんな事したって何にも解決しないよ。あんたに何があったかなんて知らないけど、こんな事やめた方が・・・」
「ーーうるさい!!」
と、急に綾が怒鳴りだしたので、私は少し怯んでしまった。
「あたしの事何にもわかってないくせに!みんなそうだよ、あたしの事全然知らない。みんな勝手にあたしの周りに群がって、ワイワイ騒ぎあってる。みんな本当は、あたしなんてどうでも良いんだよ!」
「綾ちゃん・・」
綾が怒鳴り、凛花が心配そうにその綾を見つめる。
「マナミ、あんただってあたしが嫌いだったんでしょ?いつもあたしと距離を取ってたし。誘いだって毎回断ってたもんね?」
もっともな事を言われて、私は少し黙り込む。しかし気を取り直し、すぐに話し始めた。
「・・そうだね、私はあなたの事は特に知らない。正直な話、あなたの事も嫌いだった」
ここまで来て、自分の性格を隠すつもりはない。洗いざらい全てを話す事を決意した。
「あたしは、人一倍メンドくさがりな自信がある。少なくとも、この学校では一番ね。私は誰とも関わらず、空気みたいな存在で、只々平和に高校生活を送れれば、それで良いと思ってた。でも本当は、そんな自分じゃダメだって心のどこかで思ってたんだ・・」
綾は黙って聞いてくれていたが、やがて
「じゃあマナミは、何であたしを助けてくれなかったの?あの日あたしが行方不明になった時、何で探しに来てくれなかったの?やっぱりあたしを心から心配してくれる人なんて、一人もいないんだよ・・」
そこまで言うと、綾の目に涙がうっすらと見えた。確かにそうなのかも知れない。ここでヘタに綾を刺激しても、余計に怒らせるだけだろう。
ーーいったいどうすれば良いんだ?
かける言葉が見つからず、途方に暮れていると、
「・・・綾姉さん、大丈夫?」
そう声をかけたのは、意外な事に勇樹だった。そうだった。彼は昔から綾と一緒に遊んでたんだ。
ーー勇樹なら、綾を説得できるかもしれない!
私は勇樹に後を託す事にした。みんなの視線が勇樹に注がれる。
「勇樹・・・、あたしは大丈夫。心配しないで」
「嘘だよ。絶対に無理してるよ。綾姉さん、あの日何かおかしかったもん」
あの日?あの日とは、綾が死んだ日のことだろうか?あの日、勇樹はあの場所にいたってことだろうか?
ーーもしかして!?
ふと、一つの可能性が頭に浮かんだ。勇樹が澪也達にいじめられてた理由が、何となく分かった気がする。
あの日、澪也達が綾を見つけた。そこで綾が、不良達にリンチされてたのを見て、澪也達が逃げ出した。それを勇樹が目撃していたとしたら!?
バラバラだった人物の丸が、一つのつながりとなっていた。そんなことを考えてるうちにも、二人の会話は続いていた。
「今綾姉さんは、自分を心配してくれる人なんていないって言ってたよね?」
勇樹がこんなにハキハキと話すのは非常に珍しかった。これは期待が出来るかもしれない。

「それは違うよ、だって君を心配する人なら、今目の前にいるじゃん」

その言葉が、私の心にズーンと響いた。勇樹ってこんな良いやつだっけ?
そう思うほど、今の勇樹は別人に見えていた。
「勇樹・・・」
その言葉は、綾の心にも響いたらしく、彼女はいつの間にか静かに涙を流していた。本当に勇樹ってこんなやつだっけ?何か新たな疑問が生まれた。何があったんだろう?
「・・・ありがとう、そんな風に心配してくれるの、勇樹だけだよ。しばらく見ないうちにホント立派になって・・・」
どっかの親戚みたいな口調になる綾。ねえ、ホント何があったの?
「やめてよそんな・・・お礼なら僕じゃなくて姉さんに言ってよ。僕にこの話ができたのも、姉さんが話を持ちかけてくれたからだし」
ちょ、なんで私はこうも厄介事に巻き込まれるんだろう?そう思ったのとは裏腹に、私は何か悪い気はしなかった。なぜなんだろう?
綾は黙っていた。罵倒されるのかと思ったが、しばらくすると、
「・・・マナミ」
私に声をかけてきた。何だろうかと思わず身構える。
「・・・ありがとう、あなたのおかげで目が覚めたよ。あたしってどうかしてたんだよ。きっと。死んだショックでおかしくなってたんだと思う。だから澪也」
「!!」
急に声をかけられ、あからさまに動揺している様子の澪也。その後ろで茂流、いつからいたか分からなかったけど、A組の3人が、綾の方を見ていた。
「・・・何だよ」
「とりあえず、あたしが死んだ件については許してあげる。その代わり・・・」
綾は、すっかり生前の明るい純粋な笑顔に戻っていた。
「もう二度と勇樹をいじめないこと。分かった?」
そう言って、綾がにっと歯を見せて笑う。
「・・・ああ、わかったよ。本当に悪かった」
その言葉に、嘘は感じられなかった。澪也は本気のようだ。
「いや、私は何もしてないから・・・」
「そんなことないよ。マナミちゃんのおかげだよ!ホントにありがとう」
凛花が私をギュッと抱きしめた。息苦しかったが、嫌な気はしなかった。
「で、もしこの後勇樹に何かあったら、今度は本当に許さないからね?覚悟しといてよ」
勇樹がクスッと笑った。もう勇樹は大丈夫だろう。
「ああ、こんな恐ろしい目にあったら、もう二度といじめらえねえよ・・・」
そう言ったのは茂流だ。もういつもの生意気な表情になっていた。今にもうるさくてくだらない冗談でも言い出しそうだった。
「・・・綾」
気づくと私は、幽霊の綾に話しかけていた。なぜか分からないが、急に彼女ともう一度話してみたくなったのだ。
「どうしたの?」
綾はいつもの笑顔で私の声に反応した。その笑顔に、私は少し安心していた。そして、私はさっき話し損ねたこと全てを話すことにした。
「・・・私はね、ホントは綾が羨ましかったのかもしれない。いつでも明るくてみんなを笑顔にできる綾が。思えば私は、面倒だって決めつけてみんなと向き合わなかっただけなのかもしれない」
「あたしだって、たまにはマナミみたいに落ち着いて、1人の時間を過ごしたかったなあ〜。ねえ、良かったらこれからマナミの家に行っていい?勇樹の様子も見てみたいしさ」
「え!?」
「・・アハハハ!冗談だよ。ただ行ってみただけ」
何だ冗談か・・・。一瞬本気で言ってんのかと思ったよ・・・。
「良かったねマナミ、綾と仲直りできて」
ポケットでソラマナが言う。別にそんなんじゃない。ていうか久しぶりに声聞いたな。またシロマルJr.を縛り付ける必要があるんじゃ?

ーーこうして、綾は自分の世界に帰ることになった。その世界って何かって?まあ詳しい事は分かんないけど、綾が帰るんだから、きっと死後の世界なんだと思う。この話はもうやめよう。何か悲しくなりそうだから。
「じゃね、みんな気をつけて!」
この場面で気をつけてはおかしいんじゃないのか?と思った人は山ほどいるだろうが、そこはどうか触れないでやって欲しい。
すると突然、綾の前に虹色に輝く膜が現れた。どういう原理で存在しているのか、考えたらキリがない。綾はそこに、ゆっくりと向かっていく。
「そうだ勇樹、もしあなたがまた誰かにいじめられそうになったら、思いっきり蹴っ飛ばしてやんなよ!躊躇なく全力でさ!」
今この場面で、こんな黒い事を率直に言うのはおかしいと思った人はゴキブリほどいるだろうが、どうか許して欲しい。作者は表現力が乏しいんだ、察してあげて。っていうか例え気持ち悪いなオイ。
「・・・分かった。頑張ってみるよ。綾姉さんも頑張ってね」
そう言い終わらないうちに、綾は膜の向こうに消えていった。勇樹の言葉が届いたかどうかは分からない。多くの者はその光景を、ただ呆然と見ていた。
ーーさて、これで全ての問題、厄介事が解決した。本当に長かった・・・

「全てじゃないよ。まだ私の事が残ってる」

そう言ったのは、今まで一番私のそばにいたであろう、ポケットに入った生物ーーソラマナだった。