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Re: 溺愛DAYS〜小さな君への恋心〜 ( No.2 )
日時: 2015/11/08 15:52
名前: 時 ◆93nWkRSozk (ID: KLpo2fZJ)

プロローグ

「……己を知れ、それがお前の名前の由来だろう?お前は分かっていたことじゃないか。もしかしたらサイズがないかもしれないと」
お父様が何百回目の私の名前の由来を諭した。
私の家は、空手の名家でお父様は全国の空手業界を手にする実力者。
もちろん、家では空手道場を営んでいる。

「でも制服、きたかったぁ……。もういやあ……」
小さな小さすぎるこの体のせいで憧れていた高校の制服さえも着れないことが私が泣いている理由だった。

「しょうがないだろう?知己はサイズが合わなかった、ただそれだけじゃないか」
よしよしと頭を撫でてくれるけど、けど……やっぱり着れなかったのはいや。

「知己ちゃん、高校には合格して明日から通えるんだからいいでしょ?」

二歳上のお父様の弟子が言う。優しく微笑むものだから少し私も冷静に考えることができた。

「そう……だよねっ、明日から高校、かよえるんだよね」

自分を指さして改めて弟子に聞いた。
楽に合格できますと先生に言われていたけど、ずっと小さなころからあこがれていた高校だったから一生懸命受験勉強をしていた記憶が今でも残っていた。

「そうだよ、知己ちゃんは千景高校に入学できたんだよ?」

弟子はそういって笑うと、師匠に機嫌が直ったみたいですとアイコンタクトとり、採寸会場から自宅へと車を動かしたのだった。

翌日、知己は中学時代の制服をまとい、元気よく高校へと足を運んでいた。

『あの女の子、誰? すごくちっちゃい……』

『あの子、確かこの前の入学式に務めていた子だよ』

そんな声があちこちに飛び交うので知己は、肩身狭い気持ちになって、うつむきながら教室へと入っていく。

「なんか怖い……っ」

皆が私を非難する目で見ている気がしてならない。こんな小さくて子供みたいな私をきっとバカにしているんだ……っ。
そんな時、

「あ!俺のちこー!!」

と言いながら誰かが私に突撃してくる。と思ったら私の直前でスピードを落として柔らかく包み込むように抱きしめる。


「り、凛久君……?」

彼は自称私のボディーガード兼私の未来の夫を名乗る幼馴染の森野凛久。
黒髪のつややかな髪、澄んだ漆黒の瞳、右耳に小さなピアスを付けているため、少し不良に見えてしまうところがあるが、これでも全国テストで三位を毎年とっている秀才。

「よかった、まだ虫ついてないようで。俺が来るまで待ってろって言ったのにっ」

「ご、ごめん……」

ちょっと怒った風に私にそんなことをいうのでついつい、謝ってしまう。

「知己、メガネかけたんだ」

中学時代にはつけていなかった眼鏡に早速気付き、言う。
なんで眼鏡をかけているかっていうと、

「これで少しは安心でしょ……。ほら、凛久君、前から虫が付くから少し顔を隠した方がいいって」

虫が何かっていうのはよくわからないけど、凛久君を少しでも安心させてあげたかった。ただ、それだけなのに、凛久君はとても嬉しがって私を離そうとしなかった。

そんな光景をある人達が見ていたとは知らずに私たちは、穏やかな朝を迎えていたのだった。

「木崎知己というのは、お前か?」

お昼休み。私を訪ねてきたのはまったく知らない人だけど、ちょっとかっこよかったので、つい油断をしてしまう。油断は絶対だめって凛久君、言ってたけど……。

「そうだよ……?私に何か用かな?」

ふふっと笑って対応すると、何をそれ以上、言わずに私を立ち上がらせ、どこかに引っ張っていく。

「え、えっ……、どこに行くの?」

と聞いたときには、彼たちと出会ってしまった。


『初めまして、木崎知己ちゃん!』

この出会いが私を少しだけ振り回されてしまうということも知らずに。
私は彼と彼たちと出会ってしまったのだった——