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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.9 )
- 日時: 2015/11/23 16:37
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6KsExnZ3)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode
カキコ学園。
校則らしい校則はなく、生徒も教師陣も自由奔放で気ままな者が多いこの学校。一応私立であり、そこそこ生徒数は多い。
髪型・髪色はほぼ自由。制服はきちんと着ていれば改造あり。侵入してきた不審者は基本的に生徒が撃退するというありえない世界。
そして4月。
カキコ学園では始業式を迎えていた。
ACT:1 八雲優羽
始業式を終えたカキコ学園史上最強の馬鹿コンビこと八雲優羽と梓啓香はというと。
「やーさん、やーさん無理だって!! 本当にそれはやめよう!? 取り返しがつかなくなるからさ!!」
「いやいやあずにゃん、諦めたらそこで試合終了だって安藤先生(非常勤の体育教諭。別にバスケ部の顧問ではない)が言ってたしさ。俺この前バスケの授業で言われたんだもん!!」
「どこの漫画ッ!?」
屋上へ繋がる扉の前にしゃがみ込み、ピッキングに挑戦していた。
銀髪碧眼の少年、八雲優羽は真剣な目つきで扉を施錠する鍵に向かっている。その隣にいる黒髪で如何にも真面目そうな女子生徒の梓啓香は、ピッキングをしている優羽をやめるように説得している。
理由は単純明白。
「シャー芯でピッキングなんて無理だから。折れる、折れるってば聞いてんのか白髪ァ!!」
「白髪じゃないし、銀髪だし!! 確かに白髪っぽくてよくおじいちゃんに間違われるけど、まだ16歳だからァッ!!」
ピッキングに使っていたのは針金ではなく、シャープペンの芯。細い鍵穴にシャープペンシルの芯を無理やり突っ込み、がっしゃがっしゃと出し入れしている。徐々に芯が削られて細くなっていくのだが、優羽は気にせずがしょがしょと出し入れ出し入れ。いつか折れたら鍵を本当に壊さなくてはならなくなる。
本格的に鍵を壊さなくてはならないという面倒くさいことを阻止する為に、啓香は優羽に「やめよう」と呼びかけているのだ。
「…………ねえ、何してるの?」
「「どわっほぉぉぉおおい!?!?!?!?」」
優羽はともかく、啓香はとても女子とは思えないほどの面白い悲鳴を上げた。ピッキングが他生徒にばれたのか。
恐る恐る背後を振り返ってみると、銀髪の女子生徒が首を傾げて立っていた。こちらを見つめる瞳は、朝焼けの如き紫色。顔立ちは愛らしく、男子生徒が放っておかないだろう。
確か、同じクラスだったなと優羽が考えていると啓香が「あーっ!」という声を上げた。耳にキーンと響いた。
「玲奈!! アンタも同じクラスだったんだ!!」
「気づかなかったのが酷いよ、啓香」
「え、知り合い?」
完全にアウェーな優羽は、キャッキャと手を取り合って喜ぶ2人の女子生徒を交互に見る。
「あ、この子は紅河玲奈。アタシの中学の頃からの親友なんだ。玲奈、こいつはアタシの相棒のやーさん」
「やーさん?」
「八雲優羽だから『やーさん』って呼ばれてるんだ。俺このあだ名気に入ってるんだ。よろしくな」
ニッと笑って玲奈に手を差し出す優羽。別に下心はない。これから仲間になるかもしれない彼女に友好的な姿勢を見せる。
差し出された手を交互に見て、玲奈は優羽と握手をした。こちらも満面の笑みを浮かべて、「よろしくね」と応じる。惚れ惚れするような完璧な笑みだった。
さて、と優羽と相棒の啓香はシャープペンの芯が突き刺さったままの鍵に向かう。この施錠はどうすれば壊れるだろうかと。
「やっぱシャー芯だけじゃ開かねえか。ヘアピンとか針金を調達してこないといけないかー。何であずにゃん持ってねえの? 女の子なのに」
「いやそれを言ったらアンタも持ってなさいよ。アンタ髪の毛長いんだから。後ろで結んでるんだからヘアピンとか持ってるでしょ?」
「俺髪の毛の量が多いからヘアピンだけじゃ収まらないんだよ。髪の毛結んだらワックス使ってる」
「あ、あの」
優羽と啓香のしょうもない舌戦に、玲奈が割り込んできた。
彼女の手に握られているのは、細いヘアピン。それを優羽へ差し出して、
「これ、よかったら使う? 壊してもいいから」
「……ここに神がいたッッ!!」
優羽は天井を仰ぎ、小声で叫んだ。
玲奈から渡された魔法のアイテム『ヘアピン』により、見事屋上を施錠していた鍵の破壊に成功した3人。
錆びついた扉を開けると、蝶番がギィィと軋んだ。光が隙間から入り込み、3人の網膜に突き刺さる。それから涼しげな風が頬を撫で、髪を乱す。
視界が開け、コンクリートの床と蒼穹だけの無骨な屋上が広がる。当然無人。ここにいるのは、ここを知っているのは優羽と啓香と玲奈の3人だけ。
「ハハッハハハハッ!! すっげー、すぅっげー!! 屋上こんな広いんだァ!!」
「やーさんはしゃぎ過ぎ」
キャッキャと子供のように笑いながら屋上を走り回る優羽と、それを呆れた様子で眺める啓香。さらに2人を離れたところで見つめている玲奈。玲奈は屋上には踏み出していない。何の躊躇いもなく踏み出した2人に対して、彼女は躊躇しているようだった。
優羽は玲奈の前に立ち、再び手を差し出す。同じように啓香も。
「べーやん、もう俺らのいたずらに手を出しちまったんだ。腹括ってこっちにこいよ」
「そうだよ玲奈。アンタはもうこっち側に足を踏み入れちゃったんだから」
差し出された2つの手を眺める紫色の瞳。ゆっくりと伸ばされる少女の手。
優羽と啓香は同時にその手を掴み、屋上へと引っ張り込んだ。
馬鹿コンビに新たな仲間が加わった瞬間だった。
「ところでべーやんって何?」
「紅河さんだからべーやん。可愛いっしょ? 拒否権はないからなッ!!」
「べーやんって可愛いな。アタシもそう呼ぶことにする」
3つの笑い声が響き合う。
ひとしきり笑ったあと、優羽が唇を吊り上げた。新たな悪だくみを思いついた表情である。彼の手にはスマホが握られていた。
「ところでお2人さん。もう1ついたずらを思いついたんだけど、乗るか?」