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【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.107 )
日時: 2018/03/26 11:45
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

 現状の説明をしよう。
 可哀想なことに、騎馬戦の凄惨さを知らない初心な一年生は二年生と三年生に瞬殺されて、あっという間に退場と相成った。弱い者いじめである。
 そして残った二年生と三年生の戦いであるが、まず三年生がファンタジー世界かと見紛うほどの立派な騎士鎧に身を包み、さらに騎馬を形成する生徒は何故か馬の被り物をして馬役に徹しているという始末。中には自作したのか、木の枝に新聞紙を巻きつけて槍を作っている生徒もいた。今年は武器の携帯を禁じられているはずなのに、さっそく規則を破っている。規則などあってないようなものだ。
 一方の二年生の方だが。
 こちらは「普通の騎馬じゃ相手には勝てねえ!!」ということをようやく理解したのか、はたまた馬鹿の発想か、肩車をして一騎とみなす作戦に出やがったのだ。武器の形態は様々であるが、中でも最もやばい奴は最上・八雲ペアの持ち出してきたウォーターガン(ダイアモンドも切れる特別製☆)だろうか。絶対に人に向けてはいけない武器で脅しにかかり、さらにその後ろから忍び寄った菊川・三野上ペアが三年生をハリセンで仕留めていくというなんともえげつない作戦が決行されたのだった。
 結論から言って。
 もう混沌とした状態である。

「はーっはっはっはっは!! 三年生よ、テメェらの鎧などこのウォーターガンがあれば一発で吹き飛ぶぜぇぇぇぇ!!」
「やーさん、それ首も一緒に飛ばないかな? デュラハンみたいにならないかな?」
「首無しライダーは池袋を走るモンだろ?」

 真顔で返してきた菊川柊の頭を、問答無用でハリセンでぶっ叩いた紘。自分は正常な感覚の持ち主だと信じているのだが、もうなにを信じていいのか分からないでいる。
 長門に担がれている優羽はウォーターガンの銃身を振り回しながら、

「大丈夫、これ水入ってねえから。弾がなけりゃ撃てねえものと同じよ、同じ」
「意味ないじゃん」
「脅しに使ってるだけだって」
「弾丸がないって気づいて近寄ってきた場合はどうするのさ」
「風圧で対抗するんだよ」

 ほーらこんな風に!! と優羽は遠慮なく仲間の二年生集団に襲いかかっていた騎士鎧装備の三年生へウォーターガンをぶっ放した。
 弾丸の代わりとなる水が入っていないが、銃口から放たれた暴風が騎士鎧の額にかろうじて引っかかっていたハチマキを吹き飛ばす。あえなく脱落!! 残念!!
 紘は常識外れな目の前の光景に、あんぐりと口を開けるしかなかった。逆に柊は「すげー!!」と目をキラッキラ輝かせていた。

「どやァ」
「ひっぱたいていい?」
「なんで!?」

 どや顔を見せる優羽の顔面へ、紘がハリセンを振りぬいた。パァンッ!! という音が炸裂する。
 優羽は「ご褒美です!!」という訳の分からない悲鳴を上げ、長門は長門で「美少年攻め、いい!!」などとガッツポーズをしていた。ネタが降ってきたか。

「今の俺たちは昔の俺たちじゃないんだぜ!! わはははははは無敵じゃぁぁぁあ!!」
「ねえちょっと、菊川だっけ。投げないでね。僕を砲弾みたいに投げないでね?」
「やーさんじゃねえんだからそこまでできないよ。無理無理」
「美少年攻め……『ねえいいでしょ』って小悪魔っぽく……次の夏コミは決まりだぜ!!」

 混沌の中心にいる馬鹿四人(正確には馬鹿三人と巻き込まれたただ一人の常識人)は、三年生を次から次へと退場させていく。



「あいつら反則使ってるって分かってんのかな」
「いやもう反則っていうか、俺たちも十分反則だろうけどさ。まず騎馬をなしていない時点で」

 ダイアモンドも切断可能なウォーターガン(弾丸なし)を振り回す銀髪の馬鹿と、それに付き合うハリセン装備の可哀想な少年の肩車組を眺めていた宇野響と榮倉桃馬は遠い目で言う。
 彼らもまた二人で肩車を組んでいたのだが、まあ二人も二人でちょっと反則なことをしていた。
 特殊メイクである。
 堂前妃がビクビクおどおどしながら「と、特殊メイクなら演劇でやったことありますので!!」と声をひっくり返して宣言して、そうしてできあがったのである。
 あの、四季の劇団に出てきそうな、あの、その、獅子王みたいな感じの……である。

「ちなみにこれってキング誰だろうね」
「さあ。誰かやってんじゃねえかな」

 ぼんやりと混とん状態にある騎馬戦の戦場を傍観する二人の横を、猪とミーアキャットの被り物をした誰かが、「ハクナマタータァァァァ!!」と絶叫して騎士鎧の集団に威嚇していた。レッサーパンダか。

「あれ誰」
「野島と、あれ猪の方って誰だっけ。ちょっとよく分かんねえ……」
「この調子だと来年ももっとすごいことになりそうだね」

 ふわふわとのんびりそんなことを言う桃馬に、響はやはり遠い目をしながら「ウン、ソウダネ……」と応じるしかなかった。




 なお、この騎馬戦は無効試合と化したのは言うまでもない。