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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.31 )
- 日時: 2016/01/08 23:37
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6KsExnZ3)
ACT:6 三野上紘
「春川ァッ!! 結婚を前提に付き合ってくれッ!!」
突如として教室に響き渡った、熱烈な愛の告白。その告白を教室の隅で聞いていた黒髪の男子生徒、三野上紘はビクリと肩を震わせて背後を振り返った。
次の瞬間に彼が目にした光景は、菊川柊が春川俊樹にぶん殴られているところだった。鮮やかなストレートが柊に決まり、彼の体は放物線を描いて教室のちょうど真ん中辺りでスケッチブックとにらめっこしていた男子生徒のもとまでスライディングする。確か彼は十五夜康介だったか。
全く、初日から災難である。
「……何なの、初日から」
紘は苦々しげにつぶやいた。
そもそもこのクラス替えがおかしいのだ。面倒な生徒だけを押し込めたんじゃねえの、と言いたくなるような生徒だけしかいないのだ。個性豊かな生徒なら、まあまだいいだろう。カキコ学園にはそういう生徒が非常に多い。
しかし、しかしだ。
手元でくしゃくしゃになっているクラス替えの紙へ視線を落とす。紘の名前は『2年C組』という欄にきっちり載っていた。問題はそこじゃない、一番上の名前と下から二番目の名前だ。
梓啓香、そして八雲優羽。——高校1年生の時に全校生徒の前で校長の鬘を引っぺがした、カキコ学園始まって以来の馬鹿コンビ。そんな2人が揃ってしまったのだ、これは絶対に何か起こる。というより巻き込まれる。
「……憂鬱すぎる」
最悪だ、神様という奴はどこまで自分のことを嫌っているのだろうか。
というより、HR前だと言うのに生徒たちは騒がしくしているし、廊下の方では何やらシャッター音が聞こえてきた。「フゥ!! 喧嘩!? 喧嘩する!?」という言葉が聞こえてきた。初日から本当に騒がしい。
その時だ。
背後から腕がニュッと伸びてきた。
「!? え!?」
反応した時にはすでに遅い。いきなりぐわしっと抱きつかれた。あとなんかいい匂いがする。女の子に背後から抱きつかれているのだと気づくのに、3秒ぐらいは時間を要した。
ラノベや漫画なら何度も見たであろうこの光景、いきなり自分にやられると相当心臓にクる。バクバクと心臓が早鐘を打ち、今にも口から飛び出てきそうだ。つまりそれほど驚いた訳だが。
一体誰が抱きついてきたのかと思ったら、
「うわああああ可愛いいいいいいサイズが可愛いいいいいい」
短い黒髪に高い身長——春川俊樹だった。先ほど菊川柊をぶん殴った女子生徒。
そんな俊樹は、今全力で紘に抱きついて頬ずりをしている。擦られている頬から火が出そうな勢いで頬ずりされている。若干、いやものすごく痛い。意外に頬が柔らかいなとかいい匂いがするとか温かいとかそういう余計なことを頭の端では考えていたが、大半は「痛い」と「何で」で埋め尽くされている。
「え、ちょ、何!? 何なの!? ちょっと痛いんだけど放してはなッ、放せェッ!!」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」
「可愛いとか言うなァッ!! うわちょホント痛いんだけど放してってば聞こえてる!? ねえ聞こえてんの!? 君の耳って機能してる!?」
俊樹の魔手から逃れるべく全力で抵抗するがびくともしない。自分の力が弱いのかと内心へこむ。
すると、『ぴろりん♪』という軽快なシャッター音が耳に滑り込んできた。
頬ずりされながらも、何とかシャッター音が聞こえた方向へ視線を投げる紘。そこにはスマホのカメラを構えた黒髪の女子生徒が立っていた。合金なんじゃないかな、と思うぐらいにストレートの黒髪に、赤いメッシュが入っている。赤茶色の双眸には愉悦が滲み、唇は弧を描いている。猫背気味の彼女に、紘は見覚えがあった。
にやにやと笑う女子生徒——天利いろはは無情にも彼へこう告げた。
「三野上紘、心よりザマア申し上げます」
「天利いろはァァァァ……ッッ!!」
恨めしげにいろはを睨みつける紘。だが、紘に背後から抱きついている俊樹はやはり気にせず頬ずりをしているのだった。