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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.37 )
日時: 2016/04/17 23:02
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Y5BrPURM)

ACT:8 堂条里琉


 最悪だ、と堂条里琉は思っていた。
 まずクラス替えからありえなかった。何だこのクラス。誰だこのクラスにしたの。誰の陰謀だ。
 とにかく、堂条里琉にとっては最悪だった。傍観主義を決め込んでいる神様という輩には、助走をつけて思い切りぶん殴ってやりたい。

「……クソ……何だこのクラス……」

 一年間このクラスで過ごせよこの馬鹿が。
 このクラス替えを決行した奴が、満面の笑みで言いそうな台詞が頭に浮かび、里琉はつい舌打ちをしてしまった。通り過ぎた女子生徒が何やら怯えた目で一瞥してきた。
 里琉の機嫌が悪いのは、里琉が配属されたクラスを「最悪だ」と決定づけるのは、彼の存在からだった。
 出席番号は下から二番目。銀髪碧眼の騒音少年。うるさいことが嫌いな里琉にとって、彼は天敵のような存在だ。鬱陶しい。
 名を八雲優羽。クラスメイトはおろか、先輩後輩からも「やーさん」などと呼ばれている。

「……最悪じゃねえか。何であいつがいるんだよ……」

 去年は違うクラスだった。違うクラスだったが、その悪行は耳に入ってきていた。面白いこと、楽しそうなこと、いたずら何でもやらかして教師陣からは睨まれていたが、何故か生徒からは歓迎されて。騒ぎの中心にはいつも彼がいるのだ。
 騒がしい故に、彼とはあまりかかわり合いたくなかったのだが。

「カカカ、堂条じゃねえか。シケたツラしてんな」
「……大山田……」

 忌むべき奴がいるであろうあの教室まで戻ってくると、ヌッと大男が姿を現した。
 体格がとにかくよく、何かスポーツか武術でもやっていたのかと思ってしまう。昔でいう、いわゆる番長という言葉が似合う服装に身を包み、髪型は見事な坊主頭。さらにタオルをバンダナのように巻いている。
 特徴的な笑い方。このカキコ学園において、彼の名を知らない者は——おそらく新入生ぐらいだろうか。
 大山田関太郎。確か同じC組だったはずだ。そういえば彼もいたのか。

「その様子だと、ヤァコとなんかあったか」
「……まだ何もねえよ」
「同じクラスってだけでそんなツラァしてんじゃ、よほどヤなんだろうな」

 カカカ、と関太郎は声を上げて笑った。
 彼の言う通りだ。ぐうの音も出ずに、里琉は関太郎から視線を逸らす。一応身長180を超えている里琉だが、関太郎を前にするとやはり見上げてしまう形になってしまう。
 その時だ。

「……大山田、堂条。もうそろそろ始業の時がくる、教室に入れ」

 関太郎の後ろから、橙色の瞳をした少年が現れた。きっちりと制服を着込んでいるところを見ると、相当彼は真面目な性格のようだ。自分とは大違いである。
 頭髪は日本人らしい、そして髪型髪色服装何もかもが自由のこのカキコ学園に置いて珍しい黒髪と真面目に制服を着こなした姿。想像できるのは剣道か弓道のどちらかをやっている姿だ。確か彼は剣道部だっただろうか。
 彼を一瞥した関太郎は、チッとわざとらしく大きな舌打ちをする。

「ンだよ烏丸。真面目が」
「俺は正論を言ったまでだ」

 黒髪の少年——烏丸凉と関太郎の間に、バチリと紫電が弾ける。この二人は仲が非常に悪いのだ。八雲優羽にからかわれて彼を追いかける時よりか、彼と対峙した時の関太郎は遥かに酷い。教室に入ろうとしていた哀れな男子生徒が、ビクビクと怯えながら教室へ入って行った。運がない少年である。
 このまま喧嘩をしたら止めるか。ひそかに得意の足技が出せるように、利き足を一歩引いておく。


「うっひょー!! 喧嘩ですか喧嘩ですかィィィィエエエ!! 初日からついてるゥゥ!!」


 バシャバシャ、とフラッシュの光が目に刺さった。まぶしい。
 いつの間にいたのだろうか。金髪に狐のように目が細い男子生徒が、デジカメ片手にうろちょろと動き回っていた。確か佐々木宗近と言ったか。幾度となく喧嘩の瞬間をカメラに収められては、校舎内にばらまかれた記憶がある。
 そうだ。こいつも同じクラスだったか。里琉は深々とため息をついて、天井を見上げた。
 ほら、やっぱり今日は最悪だ。