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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.51 )
- 日時: 2016/07/31 23:12
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Y5BrPURM)
ACT:11 九十九瑞貴
根っからのお腐れ様である九十九瑞貴が、高校二年になって振り分けられたクラスは『C組』だった。
もう一度言おう、『C組』だったのだ。
クラスメイトの名前がずらりと並べられた紙面に視線を走らせ、十秒で発狂しそうになった。ちょっと飛び上がって、隣にいた男子生徒を驚かせたことは内緒だ。
彼らの名前があったのだ。
「フフッ、フフフッ、ついについについにこの時がやってきましたァァァァァッッッッ!! あの、十五夜康介と八雲優羽が!! カキコ学園公式CPがッッ!! 同じクラスで成立しましたフゥゥゥゥゥイイイエエエエッッ!!」
すでに大暴走である。
カキコ学園公式CP(自分の中にある公式CPであり、別に公になっている訳ではない)が、まさかの同じクラスで邂逅を果たしたのだ。
片や耽美な美少女漫画を描く天才。真面目で堅物な完璧主義者。黒髪の麗人。
片やカキコ学園で一番の問題児。自由奔放でいたずら好きのお調子者。銀髪のイケメン。
これを喜ばずにしてどうしろと言うのだろうか。彼らの姿が間近で見られることとなった瑞貴は、もうこの先の運勢を使い果たしたのではないかと錯覚した。神様に五体投地で感謝を捧げたい。ありがとう、神様。鼻血を捧げるから勘弁して。
「でも……」
いざ教室を覗いてみたら、はて何故だろう、十五夜康介はいるのに八雲優羽の姿が見当たらない。自由奔放な彼は一体どこへ行ってしまったのか。
肝心の十五夜康介の方は、これまたイケメンとキャッキャウフフな状態にあったので瑞貴としては美味しいのだが、やはりここは八雲優羽の出番だろう。公式CPとして。もう一度言う、公式CPとして。
(じゅうやくか、やくじゅうか……それが問題ですよね……身長的には八雲君が、でもやはり問題児が『調教』と称して完璧主義者な十五夜君に攻められるのもいいかも!! 『八雲、お前はクラスの病原菌だ。この私がお前を調教してやろう』『は? 何言って、ちょ、やめッ』——)
「なあ、オイ。オイってば。オーイ。大丈夫? ちょっとさっきからデヘデヘうるさくて寝れない……」
クラスメイトでとんでもない薔薇色の世界を繰り広げていると、前の席から注意がかけられた。『つ』の前は『ち』だがちがつく名字の生徒はいないので、自然に名字に『た』がつくことになる。
前の席にいるのは男子生徒だった。他のクラスメイトとは違って、彼は少し背が低い。というか、女子と同じような身長だ。つぶらな黒曜石のような瞳で怪しげな視線を送り、細い首元にはアイマスクが下がっている。漫画でよく見る間抜けな目が書かれているアイマスクだ。
怪訝な表情を浮かべる男子生徒の存在に気づいた瑞貴は、慌てて居住まいを正して目の前の少年に応答する。
「あ、あはは! も、問題ないですよ大丈夫です私はいたって元気です!」
「涎が出てる」
「失礼しました」
ゴシゴシ、と袖で垂れていた涎を拭う瑞貴。
男子生徒は眠たそうに欠伸をして、くるりと体を反転させて黒板の方へ視線をやると、ごそごそと身じろぎをして再び突っ伏した。
誰だろう、この眠たそうでアンニュイなイケメンは。
なるべく音を立てずに瑞貴はクラス表を取り出して、自分の前の名前を確認する。『小鳥遊夢都』とあった。
「……なるほど。彼は誰と絡ませるのがいいでしょうか……」
出会ってすぐの男子生徒は、哀れお腐れ様の最初の餌食となった。
そんなことも露知らず、目の前の少年——小鳥遊夢都はすやすやと眠り続けていた。