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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.56 )
- 日時: 2016/09/08 12:48
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)
ACT:12 宇野響
意識の外で「春川ァッ!! 結婚を前提に」と聞こえてきたけど、今は別に考えていることがある。誰かが殴られたような音が聞こえてきたけど気にしない。気になるのは他のことだ。
このクラス替えは誰かの陰謀だろうかと思った。
陰謀でなかったらきっと神様が仕組んだのだろう。きっとそうだ、いや絶対そうだ。そうとしか考えられない。
そうでなければ、このクラス替えの説明ができないのだ。
「——いやうん、絶対にそうだろ。校長とか、理事長とか」
くしゃくしゃに握りつぶしてしまったクラス替えのプリントを眺めて、宇野響は机に突っ伏した。彼の視線は、クラスメイトの名前が記された欄の一番上と最後から二番目に注がれている。
一番上は梓啓香。最後から二番目は八雲優羽。カキコ学園始まって以来の馬鹿コンビと有名の、いい意味でも悪い意味でも有名な二人である。
まさか彼らが揃って同じクラスになってしまうとは、と響は思う。
だが、不幸だとは思っていない。むしろ面白そうだとは思っている。八雲優羽とは通学途中でよく出会い、一年の時から案外ノリのいい奴だとは思っていた。
「よう、響。お前も一緒のクラスでよかった。いもしねえ神様に願った甲斐があったな」
「お、桃馬も一緒か。一年間よろしくな」
「むしろ高校三年間よろしくな」
後ろの席にガタガタと着席したのは、白髪に赤い瞳の男子生徒だった。俗に言うアルビノである。まるで兎のようだ。
彼は榮倉桃馬。小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた、いわゆる幼馴染という関係である。か弱そうな容姿とは裏腹に、怪力ゴリラ並みの力を発揮するので、体育祭や体育の授業では周囲を驚かせている。響はもう慣れた。
その怪力ゴリラに目をつけたらしい八雲優羽が、やたらと瞳をキラッキラさせて「一緒に遠投しようぜッ☆」と言ってきた時は鮮明に残っている。何を、どこに、投げようとしたのだろうか、その手には彼の悪友たる小田原博人作の煙幕が握られていたのだが。
「それにしても名前だけ見ると個性豊かなの揃ったよな。馬鹿コンビもいるし」
「楽しいクラスになりそうだよな」
「そういや、響。お前聞いたか?」
唐突に桃馬が声を潜めて、響の耳元に口を近づける。こういう時は、桃馬が何か情報を仕入れた時だ。
何を隠そう桃馬は、かなりの情報通である。地獄耳というかなんというか、どこからともなく楽しそうな情報を仕入れてくるのが得意なのだ。その特技を生かして新聞部の部長を務めている。彼の作る新聞は、読んでいて楽しいと評判である。
「八雲と梓さんがまたなんかやるみたいだぞ」
「やーさんが?」
「ああ、あいつやーさんって名前だったっけ。……俺もそう呼んだ方がいいのかな」
どうするべき? と首を傾げる桃馬に、「それは自分で考えろ」と告げる。少なくとも、彼はやーさんと呼んだ方が喜ぶと思う。
気になるべきところは、彼が何をしようとしているかだ。
桃馬は追加で、「小田原と最上も消えたしな」と囁く。そういえば、机の上に戦艦長門が放置されたままだ。おそらくあれは、あの席の主が作ったのだろう。完成度高いなオイ。
今は彼が行うだろう新学期早々一発目の『いたずら』とやらに、響は心を躍らせる。どうせなら一緒に呼んでくれればよかったのに、機械関係なら力になれた。
「新学期早々、何をやらかすと思う?」
「そこまでは情報を仕入れてないな。何かをやらかすってところまで」
申し訳なさそうに眉尻を下げる白髪の幼馴染に、響は笑みを見せた。
「気にすんな。先が予想できなくていいじゃねえか。楽しみに待ってようぜ」
「新聞のネタにもできそうだしな。あとで取材するか」
「レコーダーは任せろ」
グッと親指を立てると、桃馬も同じようにサムズアップで返してくれた。やはり持つべきものは長年を連れ添った幼馴染である。
ら、なんか見知ったさすらいのギター弾きみたいな格好をした女子生徒がホームルーム始まる寸前で教室にのそのそと入ってきて、桃馬が思わず叫んだ。
「————真上!! お前どこ行ってたんだよ!!」
肝心の女子生徒は何やら不思議そうな表情で首を傾げていた。おそらく訳が分からないという意味ではなく、『誰だっけアイツ』である。
やたらと疲れ気味に椅子に座り直した幼馴染に、響は半笑いの状態で「ドンマイ」と言った。
ホームルームの時間はすぐそこまで迫ってきている。