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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.61 )
- 日時: 2016/10/08 16:11
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: UvhXWElK)
ACT:14 八雲優羽
危なかった、非常に危なかった。
目当ての教室を目指して抜き足差し足で向かっていたところ、廊下に生徒会副会長様がいらっしゃった。
あとついでにギャルと巨乳と小柄な女の子がいた。あの三人のうち一人——ギャルの女子生徒は、きっと話せばこの作戦に協力してくれるとは思うのだが、同時に笑いながら言いふらされる可能性があるので除外しておく。
なにしろ、最初が肝心なのだ。最初の、新学期早々一発目のこのいたずらが。
「どした、やーさん」
「副会長さんがいた。超危なかった」
浮かんでもいない汗を拭い、優羽は言う。その後ろにいた啓香が、明らかに嫌そうな顔をした。副会長様を忌み嫌っているのではなく、副会長様に見つかることを懸念しているようだった。
明らかに嫌そうな顔をしているのは、さらに後ろにいる小田原博人の方だった。何かと彼は彼女のことを敵視している。意見が衝突した回数は、両手の指では足りないぐらいだ。過去にあった生徒総会での討論は白熱して、五時間目と六時間目の授業が潰れたほどだ。あれはすごかった。
そんなことはさておいて。
「やーさん、これからどうするんスか?」
「職員室の隣にある部屋を狙う」
「それって放送室ッスよね?」
最上長門が不思議そうに首を傾げた。隣にいた紅河玲奈も同じように首を傾げていた。
ニヤリ、と優羽は笑うと、
「お前ら、自己紹介の用意はできてるか?」
「「「「…………ハイ?」」」」
あの相棒で有名な刑事ドラマに出てくる、眼鏡の刑事さんのような「ハイ?」だった。
職員室の隣にある放送室は、常に錠が施されている。放送部が鍵を持っているのだが、優羽と啓香は屋上の鍵を破壊するという前科がある。
ピッキングにシャーペンの芯を用いるなどという馬鹿な行為は控え、玲奈から恵んでもらえたヘアピンを使って放送室の施錠を解く。しばらくガチャガチャとやれば、いとも簡単に放送室の扉は開いた。
蝶番が軋まないように気をつけて、ゆっくりと開く。埃っぽい室内の臭いが鼻を突き、少しだけど埃が舞った。使われていない放送器具に積もった埃が、扉が開いたことにより舞ったのだ。
最初に放送室に入った優羽は「うええ」と顔を顰める。
「ちゃんと掃除しとけよ放送部!! ッたく、あれだな。今度誰かに放送室を掃除させるか……」
「一体誰にやらせる気なのよ」
「そこら辺にいる女の子を捕まえればよくない?」
自分でやるという発想がまるでない優羽に、啓香はため息をついていた。
「ところでヒロ、放送器具の使い方って分かる?」
「もちろんだ。私に扱えない機械はないよ」
「じゃあ今度車を運転してみない!?」
「さすがに無免許はやめておこう。国家の犬に捕まってしまったらシャレにならないからね」
キラリと瞳を輝かせて提案をしてきた優羽に、博人はやんわりと断りを入れた。当たり前の反応である。
素早く放送室に入った五人は、まず放送器具の電源を入れてもらう為に博人を先に行かせる。次に女子二名を行かせて、長門と優羽の二人は入り口付近に残って扉に鍵をかけてその上から押さえる。他者の侵入を防ぐ為だ。
「ところで、何故放送器具を使って自己紹介を? 明日になれば誰だってやるではないか」
放送機材の電源を入れて、パチパチと複雑なボタンを躊躇なく押していく博人。
入り口付近にいた優羽は「それもそうだけどさ」と言う。
「よく言うじゃん。最初が肝心だって。俺らのことを全校生徒に知ってほしくない?」
「君と梓君は全校生徒にその名を轟かせていると思うから、必要ないと思うけどね」
「いやでも、べーやんとかさ? ヒロとかさ? モガトとか知ってもらいたいじゃん。これから一年、一緒に楽しく過ごすんだからさ」
え、私も? と玲奈が驚いていたが、すでに優羽のいたずらに加担している時点で彼の仲間になることが決定しているのだ。簡単に逃れられはしない。
博人は「なるほど」と楽しそうな声音で頷いた。
「それなら納得だ。ぜひ加担させてもらおうか」
「ヒロは頼りにしてるぜ」
グッとサムズアップで答えた優羽に、長門が「えー、俺は?」と不満そうな声を上げた。
「もちろんモガトも頼りにしてるぜ。一緒にいたずらやらかそうな」
「どこまでも協力するッスよ」
ニヤリと二人して悪い笑みを見せた。
「もちろんあずにゃんも頼りにしてるからな。俺の相棒だもんな」
「忘れてるようならどうしてくれようと今考えていたところよ」
「ちなみに予定としてはどうするつもりだった?」
「全裸で校内一周?」
えげつねえ!! と優羽は叫ぶ。一年の時からの相棒は、やはり誰よりも容赦はなかった。
「よしやーさん、準備は整ったよ」
「全校に放送行き渡る?」
「もちろんだ。そうしなければ面白くないだろう? 校舎内の隅から隅まで声が届くようにしたよ」
自信満々に胸を張る博人とハイタッチをかわし、優羽はすでに電源が入っているマイクの前に立つ。
さて、ここからがいたずらに彩られた面白おかしい学生生活の始まりだ。
咳払いをして気合を入れた優羽は、溌剌とした声で出だしの言葉を紡ぐ。