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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.76 )
- 日時: 2017/02/07 11:58
- 名前: ・スR・ス・ス・スD ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)
2017年、あけましたおめでとうございます。
今年もたくさん更新ができればいいなと考えておりますが、何分これから忙しくなる身ですので更新は亀みたいに遅くなることでしょう。
どうか読者の皆様、気長にお待ちいただければと思います。
さて本編はここらへんにしておいて。
ここで小ネタを一つぶち込んでおこうかなって思います。
夕焼け小焼けで日が暮れて。
山のお寺の鐘が鳴る。
お手てつないでみな帰ろう。
烏と一緒に帰りましょう。
「……………………」
突っ伏していた机から上体を起こせば、教室の中には誰もいなかった。
榮倉桃馬は、ぐるりと周囲を見渡してみる。あのやたら騒がしいクラスで一番の馬鹿も、その相棒も、彼らの協力者も、不良も大人しい子も変態もなにもかも、この教室の中にはいなかった。
それは当然、彼の幼馴染でさえも。
窓ガラスの向こうに広がる紅蓮の空を見上げて、桃馬は「もう帰らなきゃ」と自然と思ってしまう。彼の前の席を陣取る幼馴染は、先生に捕まっているか先に帰ってしまったかのどちらかだ。行先を聞いていないのは、きっと自分のせい。
「あれ、えいと君じゃーん。どしたの、まだ居残り?」
「……ああ、八雲か」
「やーさん。お願い、あだ名で呼んで。姉貴と被る」
突如として教室へやってきたのは、幼馴染ではなく銀髪碧眼の男子生徒だった。身長は高く、そして何故かジャージ姿。前髪だけを輪ゴムのような黒いゴムで結んでいるせいか、パイナップルみたいな変な髪形になっている。……まあ、常に馬鹿みたいに騒がしい彼にはお似合いのスタイルだ。
口笛を吹きながら窓際の自分の席に行った生徒——八雲優羽は、鞄をリュックサックのように背負うと、いつまでも席から立ち上がらない桃馬のもとまで寄ってきた。
「帰らねえの? 夕焼けチャイムは鳴り終わったぜ」
「…………帰るけど」
「途中までは一緒だろ。あ、そうだ。うのっちが玄関の辺りでお前のこと探してたぜ」
「? 帰ってなかった?」
「実は今度のいたずらはうのっちにも一枚かんでもらおうかと思ってな」
フフン、と優羽は笑う。
いたずらの協力をしに行っていたのか、と桃馬は置いて行かれていなかったことにホッと安堵の息を吐く。それから自分の鞄を肩から下げて、「じゃあ行こう」と席を立った。
桃馬と優羽が教室から出れば、今度は完璧な無人の教室と化す。窓ガラスから差し込む夕焼けが、薄暗い教室の中を赤く照らしている。
「今度はえいともいたずらに協力しろよ。噂とか色々聞かせてくれると嬉しいんだけどな」
「今は聞かせるような噂なんてないよ」
えー、と残念がる優羽と並んで階段を下りていると、途中で黒髪セミロングの女子生徒とバッタリ出くわした。同じクラスの史岐彩だ。彼女を見ると、優羽は「うげ」と顔を顰めた。
顔を顰めた優羽を、彩が見逃すはずがなかった。
「どうして私の顔を見た瞬間に嫌そうな表情をしたのかしら? 教えてほしいわ」
「痛い痛い痛い痛い。脇を抓らないで破れちゃう破れちゃう」
ギリギリギリギリ、と容赦なく彩は優羽の脇腹を抓る。「破れちゃう」と連呼する優羽を無視して、桃馬は先に階段を下りることにした。彼女に捕まったやーさんに敬礼。彼は殉職したのだ、二階級特進とする。
いまだ聞こえてくる優羽の悲鳴に小さく吹き出す桃馬の耳に、カキコ学園のチャイムが聞こえてきた。校舎内に響き渡る荘厳な鐘の音は心臓に悪いが、雄大さを感じるものだ。
だが。
がろーん、がろーん。
どこか、その鐘の音がおかしい。こんな壊れかけの鐘の音ではない。
階段を下りていた桃馬の足が止まる。何故こんなおかしな鐘の音が、校舎内に鳴り響くのか。チャイムが壊れたのか?
「なあ、鐘の音がおかしいんだけど」
「……そうね。故障かしらね」
ようやく解放されたのか、腹をさすりながら下りてくる優羽とすまし顔の彩も同じように首を傾げていた。
桃馬も、さすがにカキコ学園の鐘の音がたまにおかしくなるという噂は聞いたことがない。カキコ学園の情報だったら色々知っているはずなのに。——いや、もしかして聞いているけど忘れたとか?
「ま、先生とか気づくだろ。明日には修理されんじゃね?」
「修理されなかったら校長に報告ね」
えいと行こうぜ、と優羽の声に桃馬も我に返り、階段を下り始める。
いや、そもそもおかしいのだ。おかしいというか、この学園自体がおかしい。静かすぎる。
部活動に熱心な学生がいるのだったら、まだこの時間でも部活に興じているはずだ。それなのに、何故こんなに静かなのか。
その時だ。
とた、とた、とた、とた。
足音。それも背後から。階段を下りてきている音だ。
桃馬はふと背後へと視線をやる。そこには無人の廊下と、上階につながる階段が伸びているだけだ。
その無人の廊下にできた影に、人影が伸びていた。明らかに長く、そしておかしな格好をした黒い影が。
ザッと血の気が引いていき、桃馬は急いで階段を駆け下り始めた。優羽と彩の隣を通り過ぎ、脇目も振らずに一階を目指す。
「お、オイ!? えいと!? なに一体どうした!?」
「後ろ見るな、なんかいる!!」
ええ!? と優羽と彩の驚いた声と、その直後に悲鳴。おそらく、階段から下りてくるなにかを見たのだろう。
二人より先に玄関へ辿り着いた桃馬は、下駄箱の辺りで携帯を弄っている幼馴染の姿を見て安心した。いや、安心はできないのだが。
慌てた様子で玄関へとやってきた桃馬に、幼馴染——宇野響は不思議そうに首を傾げた。
「どうした桃馬、冷や汗すごいけど」
「早く行こう、早く」
桃馬は急いで靴を履きかえると、響の腕を取って学校の扉を押す。だが、鍵がかかっているのか扉が開かない。
鍵を開けようとするが、何故か鍵が回らない。おかしい、内側からかかっているはずなのに。
「ぎゃああああ!! なんか変なのいた!! えいと置いて行くなよ!!」
「今それどころじゃない!!」
悲鳴と共に玄関へ駆け込んできた優羽が抗議の声を上げるが、こっちも今はそれどころではないのだ。鍵が硬くて開かないのである。力の強さには自信があるのに。
とた、とた、とた。足音が確実に近づいてきている。今度こそやばい。これはやばい。
「オーイ、桃馬。起きろー」
目を開くと、そこには響の顔があった。そのすぐ近くには、少しだけ制服を着崩した優羽の姿がある。どちらも心配そうな表情をしていた。
空は夕焼け模様だが、教室にはまばらに生徒が残っているし、校舎内も喧騒に包まれている。逸る心臓を押さえて、桃馬は安堵の息を吐いた。なんだ、夢だったのか。
「帰ろうぜ。自転車暴走族になろう」
「今日こそえいとに負けねえからな!!」
三日連続で負け続けなんて嫌だし!! と優羽が意気込んでいる。
桃馬は額に浮かんだ汗をぬぐって、「今日も勝つから」と優羽に喧嘩を売って席を立った。
————そういえば、優羽と彩が見た変なものってなんなんだろう?