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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.79 )
日時: 2017/02/25 11:57
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

 青い顔をして教室を飛び出していった相棒からの連絡が激しい。
 元々からトークアプリでの会話が鬱陶しいほどに送られてくるのだが、トイレに引き籠っているからか普段の三倍ぐらいに拍車がかかっている。

「…………」

 冷めた目で携帯の画面を見下ろしながら、次々と勝手に追加されていく吹き出しをスクロールで流していく啓香は、ついに彼からの通知を切断した。これでもう彼からのメッセージはこない。ブロックしないだけでもありがたいと思え。
 大体、通知を切られるようなことをしたのは彼の方なのだ。啓香は授業を受けているところなのである。邪魔するなら半分ケツを出した状態でもいいからトイレから引きずり出して、無理やりにでも授業に参加させてやる。——いっそそうするべきか、と本気で考えつつ、啓香はちらりと隣の席へ視線を投げた。
 熊のように巨大な図体を小さくして、ノートへと向かっている男子生徒——大山田関太郎。座席が出席番号順となっているものだから、哀れなことに彼は一番前の席になってしまったのだ。時たま突き刺すような視線を、教鞭を取っている空華へ向けている。

「ねえ、やーさんをトイレから引きずり出してきてって頼んだらやってくれる?」
「……なに言ってんだ?」

 空華へ向けられていた刺すようなというかもはや射殺さんばかりの視線が、フッと緩んで啓香へと投げかけられる。怪訝な表情をした関太郎に、啓香は相棒からのメッセージが鬱陶しいので通知を叩き切ったことを説明した。
 啓香の簡潔な説明を聞いた関太郎は、声を押し殺して笑う。

「ククク、そりゃあいい。ヤァコの相棒のくせに、随分な扱いだな」
「いじめがいがある相棒なのよね。まあ、楽しいから一緒にいるんだけどね」

 まあ今回は初犯なので許してやることにする。だが、二度目はない。決してだ。二度目をやらかした暁には、半ケツ状態で授業に出てもらうことにする。
 その旨を関太郎に伝えると、彼は「任せろ」という意味を込めて頷いた。
 すると、ブブッと啓香の携帯がメッセージを受信した。相棒の馬鹿が性懲りもなく授業を妨害しにきたか。
 さっそく協力を仰ぐ時がきたとワクワクしながら携帯の画面を見ると、相棒の名前ではない誰かの名前が記載されていた。
 最上長門。

「え?」

 意外な相手からのメッセージに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。気づかれなかったのが幸いだ。
 長門から送られてきたものはメッセージではなく、写真。試しに表示してみると、窓から撮っただろう校門の写真だった。
 カキコ学園の立派な門扉の前に、黒いワゴン車が止められている。それだけなら問題はないが、なんか、こう、怪しさ百点満点のワゴン車だった。
 その写真を無言で眺める啓香に新たなメッセージ。文章ではなく、スタンプだった。
 長門が送ってきたスタンプは、やや太り気味の猫が全身をテカテカさせて正座しているものだった。wktkである。彼らしいと言えば彼らしいのだが。
 窓際に座る最上長門の方へと視線を投げると、啓香の視線に気づいたのか、はたまた反応を観察する為にずっと見ていたのか、彼はキラッキラの笑みを浮かべてグッと親指を立てていた。そうだった。彼もまたやーさん側の人間なのだ。
 いつの間にか授業は中断され、空華がクラスで一番の馬鹿野郎の所在について問いかけているところだった。真面目に答えた玲奈と、不真面目に答えた博人のボケを聞き流しつつ、啓香はポコンとスタンプを送った。
 同じように太った犬が全身を油まみれにさせて、テカテカして正座待機しているものを。
 スタンプを見て噴き出した長門が机に突っ伏すと同時に、教室の後ろの扉が開く。