コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.80 )
- 日時: 2017/03/24 07:09
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)
ACT:6 菊川柊
春川俊樹に大衆の面前で告白してブッ飛ばされて早一か月が経過した。
菊川柊は、ぶん殴られたことを遥か彼方に忘れ去っていた。そして次なる告白の方法を思いついた。これはきっとインパクトがあり、それでいて古風なので成功率もグッと上がるだろう。我ながらいい発想ではないか。告白の方法を相談した友人の八雲優羽には最大限の感謝しかない。
ちなみに彼は柊に、少女漫画を貸して「これ読んで勉強すればイチコロじゃね?」とか適当すぎるアドバイスしかしていないのだが、柊にとっては感謝に値するほどのアドバイスだ。今までに何度か「諦めろ」とかいう辛辣なアドバイスしか貰ってなかったので。
ノートの切れ端を使って愛の言葉を書き込んでいく柊。うむ、完璧。これなら春川も間違いなく自分に落ちるだろう、と柊は頷く。あとはこれを届けるだけなのだが。
(……隣、は、ダメか)
残念。隣の席に座っている十五夜康介は、真剣に授業を聞いているところだった。何やら懸命に机に向かっているところを見ると、「やっぱり彼は真面目だなぁ」なんて考えてしまう。学生のうちに遊んで恋をしておかないと枯れた社会人生活になってしまうだろう。
いやいや、そんなことより。今は春川へこの手紙を届けることだけに専念しなければ。
春川俊樹をちらりと盗み見すると、彼女もまた真剣に授業を聞いている最中だった。ああ、その凛々しい視線を黒板ではなくて一度でもいいからこちらに向けてほしいものだ——おっと気持ち悪いことを言ってしまったか失敗失敗、と柊は自己反省をする。気持ち悪くてはあの少女漫画のようなヒーローにはなれない。
ノートの切れ端を丁寧に折り畳み、柊は後ろの席へ向いた。後ろの席は坂神優那だ。彼女もまたぼんやりと黒板へ視線を向けていたが、柊が振り向いたことにより形にいい眉が寄せられた。
「お願い、これ春川に届けてくれる?」
「……何これ」
手渡したノートの切れ端を怪訝そうな表情で眺めて、優那は首を傾げた。確かに怪しまれるだろう。
柊はそれでも中身のことは特に伝えず、「とにかくお願いね」と強引に頼んだ。優那は別に了承していないのだが、まあ強引に押しつけられた身なので仕方なしに行動を開始する。
隣の席である机に突っ伏して眠っている小鳥遊夢都を起こす。しかし、過眠症気味である彼は起きようともしない。というかいびきすら聞こえてくる。規則正しい寝息が、柊を心地のいい眠りの世界へ——いやいや、春川が自分の手紙を読むその時まで目を開いて起きていなければ。
痺れを切らした優那が、思い切り夢都の脇腹を突いた。「むはっ」とくぐもった声。そしてゆっくりと夢都が上体を起こす。ぼんやりとした瞳をこすって、夢都が優那へ恨みがましそうな視線を投げた。
「何」
「これ」
優那の手から夢都の手へ、柊渾身のラブレターが渡る。
「春川俊樹まで渡してほしいって」
「……ふーん」
特に興味はないのか、夢都は何も言うことなくポイと春川俊樹の机へ放った。ついに愛しのあの子へ手紙が届いたのだ。
ドキドキ、と心臓の鼓動が聞こえてくる。やばい、吐きそうだ。そういえばやーさんが朝から青い顔をしてトイレに行ったが大丈夫だろうか。自分もトイレに行くべきだろうか。いやでも。
しかし、春川俊樹が手紙を見るより先に、前の席である野島治人が手紙をひったくって中身を開いてしまった。なんということだ。
柊の書いた文章へ目を走らせた治人が、笑いながら文面を俊樹へ見せる。会話はよく聞こえない。だが、確実に分かったことが一つ。
俊樹はものすごく嫌そうな顔で舌打ちをしていた。治人も何か寒いものでも感じたのか、苦笑いで身震いしていた。
なんか迷惑をかけてしまったようである。しかも愛しのあの子に見られるより先に、治人に見られるとは。柊は愕然とした。
そのあと、なんか空華が何かを喋っていたのだが柊にはよく聞こえていなかった。茫然自失状態である。
(——いや、諦めんな菊川柊。諦めるにはまだ早い、そうだ早いんだ)
あの時もぶん殴られたのだ。きっと照れ隠しだ。手紙は早かったのだ。そうに違いない。
何故かポジティブな方向へと無理やり持っていき、自分を納得させて茫然自失状態から立ち直り、柊は春川俊樹へ告白する方法を再び考え直す。
ちょうどその時、後ろの扉が開いたような気がした。