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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.82 )
日時: 2017/04/18 23:42
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)


ACT:8 烏丸凉

比較的真面目に授業を受ける烏丸凉だが、その日は何故か落ち着かなかった。朝からそわそわしていた。
そもそも、授業中に彼の存在がないせいだろうか。凉の視線が、ふと窓際へと移る。
窓際の後ろから二番目。吉田莉音の前の席が空白となっている。肝心の彼女は隣の席である峯木薫子となにか話していたようだが、会話までは聞こえなかった。そもそも女子の会話に興味などないのだが。
数式を書き込んでいた手が止まってしまう。言いようもしない『なにか』を烏丸凉は感じ取っていた。空白の席の主である彼に相談しようものなら、ケラケラと笑いながら「現代の侍や」と言われることだろう。まあ剣道部だからあながち間違いではないが。

「…………なにかがおかしい」
「なにがおかしいって?」

隣から不意に声をかけられて、凉は思わず椅子を蹴倒して立ち上がりそうになった。寸前で止まったが、ガタッという音はしたようで前の席である折原菜月が心配そうに「大丈夫?」と声をかけてきてくれた。視線だけで問題ないことを告げると、彼女は授業に戻る。
凉の隣席は、生徒会副会長の史岐彩だった。訝しげな視線で凉を見てくる彼女に、半眼で返す。

「別になにも」
「気になるじゃない。なにがおかしいのか教えなさいよ」
「分からない」

それは凉にも分からないことなのだ。むしろ凉が教えてほしいぐらいである。
肌で感じる異変は、言葉ではとても表現できないものだ。でも確実になにかがおかしいということが分かる。それを彩に説明したところで、果たして彼女は理解してくれるだろうか。
期待と興味に満ちた視線で凉を見つめてくる彩から視線を外すと、今度は反対隣から「分かるんだ……」なんて聞こえてきた。隣の席は榮倉桃馬、地獄耳で有名な男子生徒だ。今まで居眠りでもしていたのか、彼の目は眠そうにトロンと垂れている。

「でも確かにおかしいよ。なんか廊下の方が特に」
「だから、そのおかしいのがなんなのって聞いてるのよ」

凉を挟んで彩が桃馬に詰め寄った。彼女はまだ諦めないのか。

「でも言葉では表せないかも。予感的なものだから、きっと史岐さんは嫌いかも」
「なによそれ。別にいいのに」
「野生の堂前が仲間に入りたそうにこちらを見ている」

桃馬が指差した先には、チラチラとこちらの様子を伺っていた堂前妃がいた。桃馬に指を差されてしまった為にその存在がバレ、彩の攻撃を買うこととなった。攻撃と言ってもおちょくりのようなものだが。
絡みに行った意外とノリのいい生徒会副会長を横目に見ていると、前の席の菜月が唐突に「あ」と声を上げた。どうやら携帯を見ているようで、凉がなにごとかと眉根を寄せると、

「近くに銀行強盗がいるんだって、現在も逃走中」
「あ、それ俺も見た」

菜月の隣である宇野響が、同じようにスマートフォンを見ながら呟く。凉は菜月に、桃馬は響にそれぞれスマートフォンを見せてもらった。
ニュース記事にはこの辺りで銀行に強盗が入り、犯人たちはいまだ逃走しているらしかった。この辺りというのがまた恐ろしい。いや、もしかして嫌な予感とは。
担任の王良空華の問いかけに対して、紅河玲奈と小田原博人がマジレスとボケをかましてクラス中を沸かせた。いつの間にか史岐彩は堂前妃にちょっかいをかけることをやめて、真面目に授業に取り組むことにしたようだ。全員、この異変に気づいているのだろうか。いやいないだろう。

「……こちらにこなければいい」
「まあ、それが一番だけどな」
「……そうはいかないかもね」

凉が平和に期待し、響がそれに同調する。菜月も凉の意見に賛成だったようで、うんうんと頷いた。ところがその考えを、願いを打ち砕いたのは桃馬だった。何故か普段から白い顔を、さらに青白くさせている。
響が心配そうに「オイ、どうした?」と問いかける。菜月も心配そうにオロオロとしていた。凉だけは、桃馬の言いたいことがよく分かった。
そして、彼の嫌な予感とは的中するものなのだ。