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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.83 )
- 日時: 2017/04/30 01:20
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)
ACT:9 吉田莉音
懸命に授業の内容をノートに書き写しているのだが、どうしても綺麗にまとまらない。というか文字が斜めっているのはどうしてなのだろうか。
吉田莉音は不満げに唇を尖らせて、今まで書いていた数式を一度消しゴムで綺麗さっぱり消した。そしてもう一度書き直すのだが、なんでかどうしても斜めってしまう。嘆きたくなった。
「そんなに消してばかりだとノートが破れない?」
「でも斜めになっちゃうし」
「そもそも罫線が引かれているノートで斜めるとは、一体どういう書き方してんの」
ギャル風な見た目によらず、真面目に授業を聞いていた峯木薫子が呆れた様子で言う。
莉音だって生徒会書記の仕事を担っているのだから、字を綺麗に書く自信はある。なのに斜めってしまう。自然の摂理ですか、いいえ誰でも。意味不明な詩でも読みたくなってしまう。
朗々と担任の空華が教科書を読み上げて、懇切丁寧に分かりやすく数式の意味を説明してくれるが、莉音が何度も何度も数式を書き直すものだから授業に追いついていない。もう諦めるべきなのか。
「ほら、こいつの参考にしなよ」
と言って、薫子が見せてきたのは嫌に綺麗なノートだった。要所要所がまとめられていて、すごく羨ましいぐらいに綺麗である。誰だ、こんなノートを取ったのは。
視線だけで誰のものであるのかを問いかけると、彼女は舌を出して笑い、
「隣のガスマスク野郎」
「あー……」
莉音は納得した。今まさに、ノートがないと狼狽えている彼がいるからだ。ちなみにそのせいで反対隣にいる史岐彩に捕まってしまい、顔を覆い隠しているガスマスクを狙われるという不憫な目に遭っていた。心の底からごめんなさい。
だが、彼のノートは見やすいのである。莉音はガスマスク男子生徒——堂前妃に謝りながらも、参考にしてノートを取った。なんか気持ち的にすごく綺麗に書けた気がする。
堂前妃という少年のおかげで授業に追いつくことができたので、薫子にノートを返してあげるように頼むのと同時に、お礼を綴ったメモ用紙も渡してもらう。メモ用紙を受け取った彼は、ガスマスクの奥にある瞳を輝かせた。
「ごめんね、今まで借りてて。すごく参考になったよ」
「う、ううううん、平気平気平気」
すごくどもりながらもブンブンブンと首を振り、首が取れるんじゃないかと思うぐらいの振り、彼は再び授業に戻っていった。コーホー、とか聞こえてきそうな格好をしているが、案外いい人なのかもしれない。
しかしまあ、参考にしたところでノートは綺麗に取れていなかったのだが。もうこれは仕方のないことなのだろうか。罫線をはみ出してしまっているし。
すると、担任の呼びかけに応じるように莉音の斜め前で寝こけていた小さな女子生徒が飛び起きた。寝癖のついた髪の毛をなんとか押さえつけ、真上ののは口元を拭った。
「え、えっと、今までその、睡魔と戦ってて……?」
「のの、今聞いてるのはやーさんの行方だ。授業中に寝ていた言い訳を考えなくてもいいよ」
「え、そうなの? なーんだ」
ふう、と安堵の息をついたののは、真っ白なノートを見下ろして「おーまいごっど」と嘆いた。今まで寝ていたのだから板書を取っていなく当然である。
莉音はののにノートを見せてあげようかと口を開いたが、彼女は身を乗り出して隣の席からノートをぶん取った。彼女の隣に座っているのは堂条里琉だった。突然ノートを取られた彼は、ののからノートを奪い返そうとする。
「返せ」
「いーじゃん見せてよ。のののノートをやばいよ、ヨダレだらけ」
「うわ汚ねえ!! 汚されたくねえからさっさと返せって!! 後ろの奴にでも見せてもらえりゃいいだろ!!」
「いーじゃん。ノート綺麗だし」
奪い返そうとする里琉の魔手から逃れるように、 ののは机を離し始めた。ちらりと里琉の取ったノートが見えたが、なんか綺麗だった。ちくしょう。
「薫子ちゃん、私は書記として自信をなくしそうです」
「いきなりどうしたの」
隣のギャルにシクシクと泣きながらノートが綺麗に書けないことを訴えると、彼女は今度こそ困った顔を浮かべて「どんまい」と答えた。もうなにも言えねえらしい。
その時、ガラリと教室の後ろの扉が開いた。そういえば、やーさんを朝から見かけなかったがまさか帰ってきたのだろうか。