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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.85 )
- 日時: 2017/05/21 22:35
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)
ACT:11 八雲優羽
ようやく腹痛から解放された優羽は、清々しい表情でトイレの個室を出た。腸の中のもの全てを捻り出し、もはや痔にならん勢いで尻を酷使したのでなんか痛みが残る。
水道で手を洗って、優羽は濡れた手を振って水気を飛ばした。壁にかけられた鏡を覗くと、銀髪碧眼の男子生徒が立っている。うん、今日もイケメン。いやいやそうではなく。
「どうしようかな。どうやって教室に攻め入ろうかな」
ビビビビビ、と水気を存分に跳ね飛ばした手でパタパタと自分の体をまさぐり、そしてピコンと閃いた。そうだ、その手があったか。
優羽はシャツの襟元をグイッと引っ張って、すっぽりと顔を嵌め込む。着替え途中で顔がつっかかりましたと言わんばかりの格好である。背中がほんのり丸見えである。
その格好は、カップラーメンの調理時間の間だけ地球を救える正義の味方に変身できる特撮アニメに出てくる怪獣のような姿をしていた。有り体に言えば、ジャミ○だった。詳しくは個人で検索してもらいたい。
馬鹿みたいな格好を今一度鏡で確認して、優羽は真剣な表情で一言。
「……せめてお面みたいなのあればなぁ」
まあいいか、と簡単に片づけて、優羽はその格好のまま廊下を歩いて教室に戻ることにした。
彼にとって幸だったことは、廊下が無人だったことだろうか。
***** ***** ******
ようやく教室に戻ってきた優羽が見たものは、全身黒づくめでアサルトライフルを抱えた男が教室に入っていく瞬間だった。
一体誰だろうか。今日って授業参観だったっけ——そこまで考えて、優羽は答えを導き出すことができた。これはドッキリか。
もしかしてて、ターゲットは教室にいない優羽だろうか。教室に入っていきなり襲いかかってくるパターンか。そうは問屋が卸さない、こちらもいたずらで対抗してやる。
ニヤリと優羽は不敵に笑み、なるべく足音を立てずに教室の扉へと近寄った。男の怒号が聞こえてくるが、どうせ演技かなにかだろう。開けっ放しになった教室の扉。優羽の視界に映ったのは、アサルトライフルの銃口を突きつけられたアルビノの少年だった。桃馬である。
「えいとになにやってんだ。いやこれも演技か」
さすがドッキリである。誰が仕掛けたのか分からないが。
優羽は助走をつけると、勢いよく教室の中に飛び込んだ。直線上にはあの黒づくめの男。優羽は男めがけて体当たりをぶちかました。
なんか脅し文句めいたものをが無様な悲鳴に掻き消されたが、ドッキリなど潰してやるのだ。
「怪獣だ、手を挙げろ!! 食っちまうどッ!!」
動きを止めたクラスメイトは、優羽に注目している様子ではなかった。なんか石化している?
優羽は「がーがー」と言いながら烏丸凉、史岐彩、堂前妃と順繰りに背後から襲いかかる。彩は本気で襲いかかることはできなかったが、その分妃は二度ほど叩いた。もちろん本気ではない。
というか、全員優羽に注目していないのだが。
「てかなに? え? みんなどうして俺に注目してないの? 俺こんなんになってんのに?」
「やーさん、今はそれどころじゃないんだよ」
呆れたような口調で薫子が諭してくる。せっかくこんな格好をしてきたのに、努力が無駄ではないか。畜生、誰だよドッキリなんか仕掛けてきた奴は。
むー、と不満げに唇を尖らせた優羽へ、ドッキリの仕掛け人である男がアサルトライフルを向けてきた。俳優さんかなにかだろうか。突き飛ばされても演技をするとは流石である。プロ根性。
「テメェ!! 舐めた真似しやがって!!」
誰もお前なんかを舐めていないし、優羽はむしろ恨みすらある。
せっかくの自分の見せ場を鮮やかに掻っ攫っていきやがって。
「誰が舐めてるだって!? 腹痛の俺に誰も構ってくんねえんだもん、これぐらいしたってよくねえ!? いいだろ!?」
思い出しただけでも涙が出てくるわコンチクショーッ!! と叫んだ優羽は、妃の筆箱を掻っ攫うとちょうど目が合った玲奈へ向かって筆箱をパスした。
「べーやん、パース!!」
「任せて!!」
なにが任せてなのか分からないが、玲奈は綺麗な投球フォームに入るや彼女の特徴である剛速球を放ってきた。優羽の横を大きく逸れて、筆箱は黒づくめのドッキリ仕掛け人の横を通り過ぎ、後ろの壁を凹ませるほどの威力を発揮した。妃はシクシクシクと机の上で突っ伏して泣いていた。あとでジャンピング土下座でもしてやろう。
すると、遠くの方で「ヤァコ」と呼ぶ声が。やーさんというあだ名で貫き通している優羽を唯一そうやって呼ぶのは、この教室でたった一人しかいない。
「頭下げとけよォ」
え、と思った時には関太郎が教科書の詰まっている机をこちらへとぶん投げてきた。
宙を舞う机。優羽は慌ててしゃがみ込み、机を回避した。
机はアサルトライフルを構えていたドッキリ仕掛け人の男へと当たると、見事彼を気絶へと導かせた。あれ、よかったのだろうか。
ポカンと机に押し潰されて気絶を果たした男を見て、それから優羽を置いて笑っているクラスメイトに、彼はどうしてもついて行けなかった。
「…………だ、誰か、説明、プリーズ…………」
あとで長門と博人から説明してもらったのだが、彼らは銀行強盗だったようだ。あのアサルトライフルも本物だったらしい。
まさかのゲストに優羽は本気で嘆いた。だったらもう少しマシな攻撃をしてやるんだった!!