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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.86 )
日時: 2017/06/03 12:51
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: UvhXWElK)

「あ、あ、あー……あー……あ、死んだ」
「だから言ったじゃん、やーさん。『そんな装備で大丈夫か』って」
「いや、うん、確かに言われたんだけど……でもこんなに強いって思わないじゃん?」
「思って」
「ウィッス」

 宮前ユカに指摘され、優羽は返事をするしかできなかった。画面の中央では茂みに埋もれるようにして倒れている自機がいる。なるべく自分に似せて作ったはずのキャラクターだが、やたらと美化されている。
 するとそこへ、ユカが操作するキャラクターが敵の攻撃を掻い潜って走ってきて、うつ伏せに倒れている優羽のキャラクターに手をかざした。緑色の光が灯り、『ありがとう!!』というボイスと共にむくりと体を起こす。
 現在二人がやっているゲームは『DEMONS EATER』というハンティング系ゲームである。魔物と呼ばれる敵を狩って、素材や資源などを回収して武器を作ることができる仕組みになっている。ゲーマーの間では一定の人気を誇り、現在では『DEMONS EATER 3』まで発売されている。さらにアニメ化もされたようで、九十九瑞貴嬢が「うへうへ」と涎を垂らしながらゲーム内のキャラクターを絡ませていた。
 優羽もこのゲームを一作目からかなり熱心にやり込んでいた。ゲームの女帝と他クラスから噂されているユカも同様である。時折「一狩りしようぜ」ってなっては、こうして二人で難易度をわざと上げて任務に挑んでいる。
 いつもは二人だが、今日はその倍の四人だった。

「つーか、おぎまゆちゃんもこういうのやるんだね。しかも射撃性能すげー的確」
「えへへ、ありがとう」

 恥ずかしそうにはにかみながら、荻枝摩由が自機を操作している。広々とした画面の中央にいる可愛らしいピンク色の髪をした少女は、巨大な大剣を片手で振り回して熊のような大物に立ち向かっている。

「つかやーさんよ、さっきから死にすぎじゃね? 装備弱いんじゃねえの」
「わざと弱い装備できたのが間違いでした、愚かでした。笑えよ」
「あははははは」
「だからってゲームキャラが腹抱えて笑う動作は腹が立つなぁ!!」

 野島治人が自機に腹を抱えて笑うポーズを取らせて、優羽を茶化した。次の瞬間には熊の強靭な爪の餌食となって、吹っ飛ばされていた。「ザマア」と笑ったら脛を蹴飛ばされた。
 ウケを狙いすぎてまだ成長段階の武器で挑んでしまったのが間違いだった、と優羽は自機を操作しながら後悔する。ほんの少しでも体力を削り取れればいいか、と思って邪魔にならない程度にガシガシと短剣で熊の踝を削ぎ落していた。実際にやったら痛い行動である。

「あ、みんなちょっと離れてくれる?」
「ミヤさんどうした? 爆弾でも仕掛けるの?」
「ちょっとね。この前編み出した方法があるんだぜ」

 ニヤリと不敵に笑ったユカに、その場にいる三人は戦慄を覚えた。
 優羽は急いでキャラクターを緊急回避、熊がいる戦闘領域とは真逆の方向へダッシュする。同じように摩由のキャラクターと治人のキャラクターも走ってきて、三人揃って防御態勢に入った。
 次の瞬間、画面を白い閃光が埋め尽くした。

『わー!!』
『きゃー!!』
『あー!!』

 三者三様の悲鳴を上げて、防御態勢に入っていたはずのキャラクターが吹っ飛ばされた。幸いにも受け身を取ってくれたのだが、はて、一体なにが起きたのか。
 熊の魔物はすでに倒れていて、『クリア』の文字がデカデカと表示されている。倒したらしい。サポーターをしてくれていた少女の声が、『お疲れ様です!!』と労ってくれている。
 各々の勝利ボイスが垂れ流しになるが、優羽たち三人はポカーンとしていた。なにが起きたのか状況が理解できていなかった。

「ミヤさん一体なにやったの?」
「調合して巨大爆弾を落としたの。すごいっしょ。やーさんにも調合方法教えてあげるから今度やってみ。スカッとするから」

 ニコニコと満面の笑みで語るユカを、素直に優羽は「やっぱりゲームの女帝だわ」と思った。間違いなく彼女は女帝だった。

「ねえ、次は『NEeT ANdROiD』やんない?」
「あれって確か働いたら負けゲームだって噂が流れてんだけど」
「大丈夫、大丈夫。カーチャン機械生命体相手に無双するから」
「確かこの前、ゲーム屋のテストプレイで無双してたよね……? そのプレイが見れるの?」
「てかそれ据え置き型ゲームじゃん。どこでやるの。視聴覚室?」
「あ、いいな。視聴覚室占領しようぜ。空ちゃん先生言いくるめば協力してくれんだろ」
「なんだかんだあの先生って先生って感じがしない先生だよね」
「荻枝、ゲシュタルト崩壊してねえか?」

*****

一区切りついたから小話でもと思いました。箸休めにどうぞ。