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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.89 )
日時: 2017/07/09 18:06
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)

はっきり言って、宇野響は巻き込まれただけだったのだ。

「うのっち、うのっち。一緒に借りもの競争に出ようぜ」
「嫌だよ、あれ公開処刑じゃねえか」
「じゃあその借りもの競争に立候補しちゃった俺は一体なんなんだよ。あれか? 死刑囚か?」
「意味分かんねえよ」
「素っ気ない、素っ気ないようのっち!! よーし分かった、君に呪いをかけてやる!! 俺と一緒に借りもの競争に出るのだーッ!!」

そんなこんなで、八雲優羽しか立候補がいなかった借りもの競争はクラスの男子生徒全員でのくじ引きとなり、結果、響と堂条里琉が道連れとなったのである。
あの時、優羽の呪いにかけられた響とその余波を受けた里琉は、キャッキャと楽しそうな優羽へ恨めしげな視線を送るのだった。せめてもの救いは優羽が第一走者を引き受けてくれたことぐらいだろうか。公開処刑までの時間が伸びただけだが。

「楽しもうぜッ!!」

爽やかな笑みを浮かべて、優羽がグッと親指を立てる。何故かイラッとした。多分正常な感情だと思う。
ちなみに正常な感情に従って、早々に怒りのメーターを振り切った里琉は巻き込んでくれやがった怨敵の胸倉をがっしりと掴んだ。その額には青筋が浮かび、殴るどころかぶち殺しそうな勢いである。有り体に言うと超怖い。
さすがに楽しい楽しい体育祭で血みどろな光景を出す訳にはいかないので、響は優羽と里琉の間に割って入って喧嘩を止めた。

「待て待て待て。選ばれたんだから仕方ないだろ」
「お前はいいのか!? こんな馬鹿に巻き込まれて腹立ってねえのか!?」
「ぶっちゃけ腹は立ってるしやーさんに対して眼球を抉り出したいぐらいに恨んでるけど、いっそ観客全員の眼球を抉らない限りこの羞恥は終わらないと思う」

まさに正論だった。
これから公開処刑される響と里琉が逃れる為には、ギャラリー全員の眼球を抉る必要があった。そんなことをしている時間などない。あと眼球を抉り出すのも面倒である。化け物じゃあるまいし、一体どうやって抉り出せと。
里琉は納得したのか、忌々しげに舌打ちをする。自分も公開処刑にされるのだ、そうするしかないと思ったのだろう。
そうこうしているうちに、選手へ整列が言い渡された。優羽がニコニコ笑顔で「見てろよ俺の勇姿!!」なんて言いながらスタートラインに立つが、その後ろ姿へ里琉が「転んで恥を掻け」などと吐き捨てていた。どこまでも堂条里琉は八雲優羽を恨んでいるようである。当たり前か。
優羽が立ったスタートラインは、最も内側にありながらスタート地点が最後尾にあるという場所だった。他のクラスの選手たちは、にやにやと優羽を見ている。

「大丈夫かな、やーさん」
「いっそ転んでくれねえかなァ」

次のスタートラインに並びながら響が心配そうな声を上げると、その後ろから里琉がボソリと吐き捨てた。どれだけ恨みがあるのだろうか。
やがて、パァンとピストルの音が蒼穹へと響き渡った。選手が一斉に駆け出し、道の途中に置いてあるお題の紙を目指す。優羽は三人ほどあっさりと抜いてお題の紙へと辿り着くと、何故か彼は動きを止めた。不思議そうに首を傾げている。
問題発生か。まさかこの世にないものをお題として出されたのかと思いきや、調子に乗った放送部の実況が聞こえてきた。

『さて、第一レースの借りものは全員同じ「好きな男子」!! 喜べ腐った女子と野郎ども、仲よく手を取り合ってゴールする野郎どもが見られるぜ!!』

初めて優羽の横顔に、誰かに対する殺意のようなものが浮かんだ。
というか、好きな男子? なにを言ってんだ、この学園の体育祭実行委員は。誰か常識のある行動はできなかったのか。

「次のレースで変なお題が出てきたらどうすっか」
「…………そうなったら体育祭実行委員を縊り殺せばいいんじゃねえかな」
「あーもうそうするか」

響と里琉は自分の番で変なお題が出てきたら、体育祭実行委員を縊り殺すことを決めた。
優羽は迷った末に、男の中で最も仲のいい小田原博人を背負ってゴールを果たした。まさかあそこはそういう関係だったのかと疑ったが、「LOVEじゃなくてLIKEです」と珍しく優羽が頭のいいことを言った。窮地に立たされると頭の回転が早くなるようだ。

「さて」

次のレースは響の番である。里琉から憐れな視線を送られて、スタートラインへ並んだ。
どうか神様、まともなお題でありますように。


ちなみに響が引いたお題は、『アホ』だった。一位の席にいる優羽を無理やり拉致してゴールした。賢明な判断だったと思う。