コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.91 )
日時: 2017/08/07 11:05
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: ovjUY/sA)

ACT:3 峯木薫子



 そろそろこのカキコ学園は終わってるんじゃないかなって思っている。
 薫子は事前に配られた体育祭のプログラムへ目を走らせて、厳しい結論を下した。
 薄桃色の二つ折りのプログラムだが、まず読めない。装飾が華美である。プログラムの最後に掲載されている四コマ漫画の意味が分からない。以上。
 こう、なんかクリスマスパーティとかにあるモールで縁取られた為に手触りが大変よろしくないプログラムを校庭へと叩きつけた薫子の反応は正常である。

「どしたの一体。四コマ漫画が面白くなかった?」
「注目するところはそこだっけ? 生まれてまだ十六年だけど、こんなに持ちにくいプログラムを見たのは初めてだわ」
「内容も全然読めないしね。ヒエログリフで書かれてるのかなこれ」
「ンなもんで書いてんじゃねーよ運営ッッ!!!!」

 絶叫した薫子は正常だと思う。ただ、SAN値が急速に削られていっているのだが。
 ケラケラと宮前ユカは楽しそうである。プログラムに余計なものとして掲載されている四コマ漫画が大層面白かったようだ。そんなに面白い内容なのかとプログラムを拾い上げて読んでみたのだが……。

「……ねえこれ内容分かってる?」
「分かんない!!」

 元気よく答えてくれやがったユカ。
 絵柄自体はものすごく上手い——というか、この絵柄って十五夜康介が書いたものじゃないのだろうか。繊細なタッチの男女がキラキラと描かれているのだが、その内容が全く頭に入ってこない。
 だってプログラムと同じくヒエログリフ()で書かれているのだから。
 美男美女が宇宙人の言葉を話している内容で、もう薫子の体力はゼロに近かった。正気を保っている自分が馬鹿のように思えてくる。

「大丈夫か? プログラム自体に突っ込んだら負けだぞ?」
「わ、分かってる……分かってんのよそんなことは……でもね、このプログラムを突っ込まないと……正気が保てない……」
「本当に大丈夫か?」
「だいじょばない……」

 心配そうな様子で寄ってきた春川俊樹が、至極当たり前のことを言ってきた。だよな、と薫子も思った。このプログラムに突っ込んだら負けなのだ。
 それにしても、と俊樹が改めて訳の分からないツッコミどころ満載なプログラムを開いて、

「一体なにが書かれてんのかさっぱりだよな。宇宙人なら読めんじゃねえのこれ」
「作った運営の正気度を疑うね。絶対SAN値がPINCHだよ」

 
 SAN値がPINCH〜、とユカは呑気な様子で歌っている。彼女もまたプログラムが読めていないのだが、まあ流れでどうにでもなるとでも考えているのだろう。
 その時だ。

「あ、あの、えーと……」
「あらら沙羅キュンじゃん。どしたの」

 話しかけにくそうに沙羅華一が、ヌッと俊樹の後ろから現れた。反射的に俊樹が裏拳を振りかぶりそうになって、薫子が慌てて止めた。そのまま顔面でもぶん殴ったら、C組不幸ツートップとも言われている彼が可哀想だ。
 一方で俊樹の方は華一のことを不審者か、はたまた誰かと勘違いでもしたのか、「あ、ごめん……」と本当に申し訳なさそうに謝った。裏拳に振りかぶり方が堅気の様子じゃなかったので、ストーカーでもされているのだろうか……?
 怯えた様子の華一の手には、プリントのようなものが握られていた。わら半紙で刷られたそれは、

「えーと、プログラムの解読表です……ぜひ参考に、と」
「……普通、朝に配るものなんじゃないの……?」

 薫子が恨めしそうに華一へ苦言を呈すると、彼はより一層ビクッと肩を震わせた。そんなに凄んだつもりはなかったのだが……おそらく薫子のギャルじみた容姿が原因だろうか。

「さ、さっき、その、体育祭実行委員長が『ふざけちゃってごめーんね☆』って舌出しながら言ってきて」
「よし殴ろう」

 そんな馬鹿を放ってはおけない。薫子が出る種目までまだ時間はある。下手人を見つけてこの手で葬り去るぐらいできるだろう。
 スッと雰囲気が変わった薫子へ、「ついて行ってもいい?」と提案してきたユカと「俺も行く」と手の骨をボキボキと鳴らす俊樹。どちらも楽しそうな雰囲気である。
 背後の方で「エンダァー!!」「イヤァー!!」という訳の分からない悲鳴が聞こえてきたが、薫子のやる気スイッチはすでにまだ見ぬ体育祭実行委員長へと向けられていた。