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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.95 )
- 日時: 2017/10/08 10:33
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7pjyJRwL)
ACT:5-B 佐々木宗近
きっかけは些細なことに過ぎなかった。
ただ宗近は気になっただけだった。
「借りもの競争が公開処刑だって言うけど、実際はなにが公開処刑なんだと思う?」
「知るか」
宗近の質問を一蹴したのは、体育祭の謎めいたプログラムの隙間にちみっこいキャラクターを落書きしている十五夜康介だった。デフォルメされたキャラクターが意外と可愛い。中には文字を持ち上げてプルプル震えているというキャラクターもあった。
宗近がちらりと康介のプログラムを覗き込むと、彼はじろりと宗近を睨みつけてきた。射殺さんばかりの視線である。めっちゃ怖い。
ちなみに康介の手は正直な様子で、プログラムの隙間に描かれた小さな女の子が頬を赤らめて「恥ずかちい……」なんて吹き出しがあった。あ、これ恥じらってるのか。
「足が遅い奴にとってはもう全体的に公開処刑だし、借りもの競争だって公開処刑だし、玉入れも公開処刑じゃね?」
「どうでもいいが、何故体育祭の競技が公開処刑になる」
やはり康介はこちらに視線を向けずに、こう言ってきた。プログラムに描かれた次なるキャラクターは怪獣だった。口から火を噴いている。おおよその名前は『ジュウゴジラ』だろうか。
宗近が性懲りもなくプログラムを覗き込むと、やはり康介はじろりと睨みつけてきた。手は「やめて……」と涙で瞳を潤ませたデフォルメの女の子が生産された。なにこの子、逆にすごい。
「いやー、よく考えてみたら体育祭の競技って全体的に恥ずかしいモンばっかじゃん。公開処刑じゃん?」
「処刑ではなくて凌辱の方がいいんじゃないのか」
「どっちでもいいよ。処刑の方が殺される感があるから処刑の方がいいわ」
そうか、と適当な返事をして落書きに戻る康介。投げキッスをしているテルテル坊主の絵に吹き出しを添えて、「荻枝ァ!!」とあった。そして我に返ったらしく、康介はプログラムの端をぐしゃりと握りつぶしていた。
その一連の動作を静かに観察していた宗近は、今度荻枝の写真でも売りつけたら高く売れるんじゃないかと考えだす。恋をしている奴ほどチョロイものはない。
その時だ。
「話は聞かせてもらった」
「話は聞かせてもらったわ」
別方向から二人同時に声が叩きつけられた。
え、なに、と宗近が顔を上げると仁王立ちをしている小田原博人と史岐彩の姿が——。
あ、やばいこれは地雷を踏んだか。宗近は張りつけた苦笑の裏で、後悔の念を吐き出した。康介は我関せずと、ひたすら落書きに徹している。
「私が思うに最も恥ずかしいと思える競技は——」
「私が思うに最も恥ずかしいと思える競技は——」
仲よくハモった二人は、
「——パン食い競争だ!!」
「——飴食い競争よ!!」
違う答えを宗近へ突きつけた。
これは戦争になる予感だ。宗近の瞳がきらりと輝き、潜ませておいたデジカメを装備する。
案の定というべきか、博人と彩は互いに睨み合う。やーさん曰く、『彩姐さんに絡んだヒロはめっちゃ怖い』とのことだ。バチバチと二人の間に紫電が弾ける。
「これは——」
「——決着をつける時がきたようね」
こうして始まったのが、パン食いVS飴食いの不毛な争いである。
二人は大真面目に討論していたが、宗近にとっては最高のネタだった。巻き込まれた康介は平和的解決を求めて鳩の絵を描いていたが、リアルすぎて逆に気持ち悪かった。