コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋愛事情 ( No.2 )
- 日時: 2015/11/22 22:00
- 名前: 愛莉 (ID: 8.g3rq.8)
▽1話 私の楽しみ
「はじめ」
その一言で周りは動き出す。
シャーペンの先が机の上の用紙に擦りつく音が教室に響き渡る。
そう。今日はテストの日。そして進路決定ともなる大事な全県模試の日。
私、田邊 明日香はこの日が苦しみであり、楽しみであった。
というのも、テストが楽しみな訳じゃなく、テストの席の話。うちの学校では、テストの日は出席番号に並んでテストを受ける。その席が、楽しみなのである。
(あー、全然分からない…もっと勉強すればよかった…)
そう思いながらも、前の時計を見る。
(えっ!あと10分?!どうしよう、終わらないよ…)
とりあえず、わからない問題はとばして、わかる問題を急いで解いていった。
「やめ。後ろから回収」
(えっ?ちょっと早くない?)
あれから5分たったところで“やめ”の合図。もう一度時計を確認して、黒板に書いてある日程表を見る。
そして、いつもと時間割が違うことにやっと気付く。
こみ上げてくる絶望感。
1番後の子が半分真っ白の私の回答用紙を回収していく。
「あー。だめだー。おわったー。」
後ろの席の豊本奈央の方を見ると、余裕のお顔で。
「ほら。2日前まで余裕にテレビなんて見てるから。これで明日香の進路決まるんだよ?」
「うう…分かってるけどさ…」
「…けど?」
「……。」
「じゃ、これからは私と一緒に勉強だ。」
「ええー。奈央と勉強とか死んじゃうよー。」
「死にません。」
「いや、死ぬ!」
「なら、勉強しないの?」
「よろしくお願いします。」
奈央は私の親友で、成績優秀のできる子。高校も、県で一番のところに行くそうだ。
奈央とはいつもこんなやり取りしてて、結局私が負ける。
「なー、できた?」
「えっ?」
突然投げかけられた声の方に振り向くと、それは隣の席の遙歩くんだった。
「いや、全然。さっぱりだよ(笑)」
ドキドキしながら、でも気付かれないように一生懸命答える。
「だよな!俺も。やべーなー。」
そう言って遙歩くんは他の男子のところへ行ってしまった。私はなんとなくその姿を追いかける。
そこで、異様な視線に気付く。後の奈央からだった。
「な、なによ。」
「顔。ニヤけてる。よかったねー。話せて。」
「うっさい!」
そう。これが“楽しみ”の理由。
隣の席の遙歩くん。