コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.10 )
日時: 2015/12/22 11:50
名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)

episode9
title 愛なんて

成瀬さんの言葉を反芻していたらあっという間に日が暮れた。

何も食べる気になれなくて、ごろりとソファーに寝転がったらそのまま眠ってしまった。



夜が明け、眩しさに目を覚ます。

ゆっくりと体を起こすと、寝違えたのか腰に鈍い痛みが襲う。
腰に病を抱えている私は走ることすらできない。学生の頃は体育の授業をよく休んでいた。
寝違えただけでも腰にくる負担は相当なもので、通院を余儀無くされる。

今回も、例外ではないようだ。


「もしもし、舞岡です」

『あぁ、織ちゃん。どうした?』

「…腰をちょっと」

『了解。今日は午前中は空いてるから』

「はい。毎度すいません」

『全然。気をつけて来なよ?』

「はい、ありがとうございます」

小学生の頃からお世話になっている整骨院の久志先生。
いつも申し訳ないなぁ…。

髪を軽く結って、スウェットに上着を羽織って家を出た。
家の前でタクシーを拾い、都心から外れた整骨院へ向かう。


「お客さんは何座ですか?」

運転手さんが弾んだ声で聞く。

「え?…山羊座です」

「おぉ!今日の運勢は五位です!」

「なんか、微妙ですね?笑」

「全然良い方ですよー。今日はいい日になるでしょうねぇ」

「それは嬉しいですね。…占いできるんですか?」

「いえ。朝の占い番組を欠かさず見てるんです。これが結構当たるんですよ?」

「へぇー!私も見ようかなぁ」

「えぇ、是非。あ、でも十二位だった時は一日沈んじゃいますけどね笑」

「結構なリスクですね笑」

「そうなんですよ笑 でも一位だった時の嬉しさ。これがあるからやめられないんですよ」

「依存症状ですね」

「はい、困ったもんですよ」

他愛ない会話をして、あっという間に整骨院に着いた。
また、会えるかな。


「どうした、織ちゃん。ぼーっとしてる」

「あ、すいません」

「それで、今日は…」

「いつも通り鈍い痛みで。でもちょっと違和感と言うか」

それは起きた時から感じていたもの。
ぴん、と腰が張っているような気がするのだ。
いつもは痛みだけなのに。

久志先生にそう伝えると深刻そうな顔をして、私を診察台に寝かせた。

「ここが、張ってる?」

「はい」

押されると強く痛んで、思わず顔を歪める。

「…こりゃ、重症かもね」

「え?」

「筋肉が張って炎症も起こしてる。二週間はあまり動かない方が良いね。寝違えただけじゃないね。何か腰に負担になるようなこととかした?」

「…」

そう聞かれても思い当たる節がない。

「例えば…、まぁ、言いづらいんだけど。夫婦生活の上で、そういうことがあるでしょ?」

あぁ、それか。
そういえば、この間の誠はオスの本能で私を抱いていた。

「…はい」

「二週間というか一応三週間はそういうことなしで。それで次は手加減してもらいなさい」

「はい」


…子供を作るための行為。
愛もない私に〝優しくして〟と言われても、きっと何も変わらない。

愛なんてない。

愛なんてない。

私は…


…どうなの?