コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.11 )
- 日時: 2015/12/22 11:51
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode10
title ちゃんとした妻
あれからいつもとなんら変わらない毎日が過ぎ、あっという間に誠が帰宅する日になった。
明け方、メールが届いた。
内容は〝五つの会社を買収に持ち込んだ。今日は各社長と食事会がある。織も参加するように〟と、とても業務的なもの。
コーヒーを淹れて啜る。
いつもより苦味が口に広がった。
豆の量も種類もいつもと同じ。
なんだろう、と思ったら涙がぱたぱたと水面を揺らしていた。
「あれ、おかしいな。はは…っ」
家に響く声。
妙な虚しさでいっぱいになって俯いた。
もう、嫌だよ…。
誰か、助けて。
ぴーんぽーん
ベルが鳴る。
誠…?にしては早い。
恐る恐る玄関の扉を開ける。
深く帽子をかぶって、マスクで顔を隠しているその人。
その人はマスクを下げた。
「影山さん…」
Streamの影山さんがいた。
どうして家に…?
「今日、誠さん帰ってくるんですよね」
「そうですけど…。ここで話すのも…中で話しませんか?」
「…じゃあ、お邪魔します」
なんか、不思議。
Streamのメンバーが家にいる。
成瀬さんだったらな、って思う。
失礼だけどね。
すっかり冷たくなったコーヒーを流して、来客用のマグカップに紅茶を注ぐ。
この間の飲み会で、確か影山さんはずっと紅茶を飲んでた。
紅茶を出すと、影山さんはちょっと驚いた顔で私を見た。
「ありがとう。俺、コーヒーより紅茶派なんです」
「知ってますよ笑」
私がクスクス笑うと影山さんは顔を赤らめて微笑んだ。
「それで、話っていうのは…?」
「あぁ、」
急に真面目な顔つきになる影山さん。
思わず背筋を伸ばして影山さんの言葉を待った。
「海の話だけど…」
成瀬さんの…?
「…」
「連絡取ってるよね?」
「…はい」
別にやましいことはないんだけれど、後ろめたい気持ちがある。
「織さんは誠さんの奥さんで、誠さんはStreamと契約している会社の社長です。もし、織さんと成瀬さんが連絡していることがバレたら、契約を切られてしまう可能性があるんです」
「…ただお話ししているだけです」
「会いたいとか連絡以上のことを望んではいませんか?」
「…」
会いたい…。
会いたいよ…。
「もう連絡とるのやめてもらえませんか?」
「…嫌です」
「織さん、ちゃんと社長の妻をやってくださいよ」
ちゃんとした社長の妻に…。
私は精一杯やってきた。
でも、成瀬さんに対して抱く恋心は決して清いものじゃない。
許されるものではない。
私は誠の妻を精一杯やること以外に道はない。