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Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.12 )
日時: 2015/12/22 11:56
名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)

episode11
title 絶句

「はぁ…」


あの後すぐに帰って行った影山さん。
交代するように帰ってきた、誠。

私は小さく息をもらす。
痛み止めの錠剤を飲んで痛みは治まったのだけれど、今考えると薬は飲まないでおいた方が良かった。
行きたくない。


「織、もう出よう」

「はい」

「今日は重要な日だ。何があっても抜け出すなよ?」

「はい」



家を出て、車の助手席に座る。


「織…。今日は本当に大事な日だから、抜け出すなよ?」

妙にしつこい。

「…わかってますから」

「なら…、いいんだ」


車はそのまま発進する。
私は頭の中で誠の言葉の意味を繰り返し考えていた。

都心近くの高層ビル、the SOUNDsの本社が見えてきた。
高層ビルが立ち並ぶ中、一際大きな建物。


「じゃあ、行こう」

「…はい」


車を降りて、本社内を歩く。


会場は最上階。
暗くなってきて、夜景が眩しい。
もう何度も来ているのにちっとも慣れやしない。


エレベーターに乗る。
誠の後ろ姿を見るだけ。

普通の夫婦らしいことなんて何もない。
恋人同士で、一生私を騙してくれればよかったのに。

「織…」

突然誠が振り返る。

「はい、なんですか?」

「ごめんな」

そう言うと誠は私の顔の横に手をついて唇を寄せた。
優しいキスに頭が回らない。

唇を離すと誠は私をぎゅ、と抱きしめた。

丁度、エレベーターの扉が開いた。
誠は私の手を握り歩き出す。

私に対して愛があるのではないか、そう思えた。


会場に入る時にその手は離されてしまったけど、付き合っている時の淡い感情が蘇ってきてすっかり成瀬さんのことは忘れていた。


「失礼します」

年配の社長さんが五人揃っていた。
社長さん達は慌てて立ち上がり、誠に深く礼をした。

「本日はお集まりいただきありがとうございます。早速、会議となりますがご都合の悪い方はいらっしゃいませんか?」

「いいえ、始めましょう」


「では、失礼します」

縦長のテーブルに用意された料理。
その前の椅子に座る。

「折角の料理ですので、食事しながらお話でもできれば」

「お気遣いどうもありがとうございます」


「今日はよろしくお願いします」

乾杯も終わり、食事しながらの会議が始まった。
内容はそこまで堅苦しくはなく、今後の方針についての説明が主だった。


三時間私は話を聞くだけ。

とても大変だけどなんとか耐え切った。


「今日はありがとうございました。ではまた後日」

会場を出ると誠が私の手を強く握った。


「ごめんな、携帯…、見ていいよ」

携帯の電源はoffにするように車で言われていた。
前に飲み会で抜け出してしまったからだ。


電源を入れると、メールが二件。
それは、母の主治医からだった。

「え…」


内容を見て絶句した。








〝お母様が危篤状態です。すぐに来てください〟