コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.2 )
日時: 2015/12/01 06:47
名前: 逢逶 (ID: Ft4.l7ID)

episode1
title 日常

「ただいま」

「…おかえりなさい」


夫の脱ぎ捨てたジャケットをハンガーにかける。
夫、舞岡 誠は日本音楽業界を支えるレコード会社〝the SOUNDs〟二代目社長である。

「飯用意してるよな」

「はい」


八時を回っていたので私はすでに食事を済ましていた。
一人で食べる夕飯は味気なかった。


私はソファーに座って本を読む。
誠は食事をする。


いただきます、ごちそうさま、はない。
ただ時計の秒針の音が響く。


「あ、そうだ。…母さんから電話があったから」


「わかりました」

私は携帯を取って、リビングを出た。


義母に電話をかける。


「もしもし。先ほどお電話をいただいたと思うんですが」

『あぁ、織さん。あなたいつ子供ができるの?』




「すいません」


謝るしかできない。
私と誠は確かに付き合っていた。
優しい誠がとても好きだった。
でもそれは私と早く結婚するための仮面だった。
子供を早く産ませるために優しくして、私を夢中にさせて、地獄のような生活を味あわす。

『謝るんじゃなくて。早く…ね?』


「…はい」


『排卵日とか、調べて…、その日に誘うとかあるでしょ』


「…わかりました」


『それじゃあね』


「はい」



電話を切ると一気に力が抜けて行った。
その場に座り込み、必死で涙を堪えた。


これが私の日常。
逃げ出すことが出来ない、辛い毎日。