コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.21 )
- 日時: 2015/12/27 21:48
- 名前: 逢逶 (ID: J/brDdUE)
episode2
title 反対
「…なぁんてな?笑」
影山さんは重い空気に気付いて笑って誤魔化そうとしているけど、目が完全に笑ってない。
私でもわかるくらいだから、メンバーは多分わかってる。
さっきの発言が冗談じゃなかったことくらい。
「もういいよ、秀」
成瀬さんが制止する。
私はたまらなくなって水を飲む。
「…ねぇ、秀。…海が織さんを好きって、なに?」
笠間さんの瞳が不安げに揺れる。
「秀じゃなくて海に聞けよ。好きじゃないならこの話はそれで終わり」
時田さんの言葉にみんながごくりと生唾を飲む。
「どうなの?」
「俺は、秀の言うとおり織さんが好き。それは織さんも知ってる」
…言っちゃうんだ。
動揺を隠すためにスカートをぎゅっ、と握る。
「お前、それがどういうことだかわかってんの?」
時田さんは成瀬さんの胸ぐらを掴む。
「わかってる。それでも好きなんだ」
成瀬さんの目には迷いがなくて、私に対しての気持ちの大きさを知った。
それがちょっぴり酸っぱくて甘くて、辛かった。
「社長の奥さんだぞ…?」
「…そんなの覚悟してる」
「じゃあなんで…!」
「俺だったら織さんを幸せにできる」
成瀬さんと一緒になれたらどれだけ幸せなのだろう。
でも…、壁が大きすぎるよ…。
「…そんな、織さんが幸せじゃないみたいな言い方…」
時田さんは成瀬さんから離れて呆れたように椅子に腰を下ろした。
「織さんは幸せなんですよね?」
有明さんは大きくため息を吐きながら言った。
どうしよう…。
幸せです、と言わなければいけないのに、そう言うことにより成瀬さんとの距離が遠くなると思うと口に出すことができない。
私は幸せではない。
羨まれるべき家庭に誠への愛を持って嫁いだものの、今は完全に失われ、子供を産もうという使命感だけが胸に残り、わだかまりを作っている。
「…どうなんですか?」
「…幸せなわけないじゃないですか」
私の返事が予想外だったのだろう。
成瀬さん以外は私の顔を凝視して、ぽかんと口を開く。
「織さん…」
「あーあ。織さん、そこは幸せって言っておかないと。…海が諦めてくれないですよ?」
笠間さんが笑顔で言う。
「…陽、なに笑ってんだよ」
影山さんは軽く笠間さんを睨む。
「…悪ぃ。でも、俺は海を応援する」
「そんな単純じゃ無ぇんだよ」
時田さんも笠間さんに怒っている。
そんな様子を見て、有明さんが笑いを堪えている。
「…愛も愛だよ」
「ごめん、ごめん。でも、俺も海を応援する。当たって砕けろ」
「砕けるかよ」
成瀬さんも強気になる。
私がいるってこと忘れてない?
「…つーか、そろそろ」
「あぁ。そうだな」
お開きかな?
立ち上がると、成瀬さんに手を握られた。
見上げると成瀬さんはにこっ、と笑って私の耳元に顔を寄せて囁いた。
「ここからは本気ですから」