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Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.22 )
日時: 2015/12/28 20:34
名前: 逢逶 (ID: mvR3Twya)

episode3
title 感情

「送ります」

「すいません」

夜中で一人で帰る自身はなくて、車に乗せてもらうことにした。
運転は時田さん。
私は後部座席に乗り込み、隣には成瀬さんがいる。
というのも、あれから手を握ったまま離してもらえていないからである。

「…海、遠慮とかないの?」

影山さんが助手席から振り向いて繋がれた手をじっと見る。

「ん?もう好きだって知ってるんだから遠慮しなくていいじゃん?」

「でもな…。…まぁ、いいや」

よくないよ?!助けてよ!照れるじゃん!


誰も助けてはくれず…。



そのまま家に到着した。

手を離さなければいけないんだけど、名残惜しくて繋いだ手に少しだけ力を入れてみた。

「織さん…」

成瀬さんがあまりにも切なそうな顔をするからなんだか悪い気がして、手を離す。

「送ってもらってありがとうございました」

車から降りようとドアに手をかけると、右腕を掴まれた。


「海」

時田さんの低い声が響く。
私の体はその声でびくっと震えるのに、成瀬さんは全く微動だにしない。

「…帰ります」

まっすぐ目を見て伝えると離してもらえた。
ドアを開けて車を降りる。

「ありがとうございました」

深く礼をする。
家に向かう途中涙がこぼれてきそうで夜空を見上げ歩いた。


「織さん!辛かったら言ってくださいよ?!」

窓を開けて叫ぶ成瀬さん。
誠に聞こえたら、そう思えるほど余裕もなくて。

「…っ」

涙をこらえるので精一杯だった。



ねぇ、優しくしないでよ。
好きになっちゃうじゃん。

ダメだよ。
成瀬さんには明るい未来があって。
私は足を引っ張るだけ。

私がもっと強かったなら、誠を捨ててでも成瀬さんの胸に飛び込んでた。


でも、成瀬さんの未来と私の家庭を壊す勇気はない。






今日、私は確かに気付いてしまった。

後戻りできない感情に。










成瀬さん、あなたが好きです。