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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.7 )
- 日時: 2015/12/22 11:49
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode6
title 囁き
飲み会終わり。
ホテルに宿泊することになった私たち。
酔っ払い気味の誠に肩を抱かれて、部屋に入る。
それでも考えるのは成瀬さんのこと。
まだポケットの中のものを確認できていない。
触った感じは、紙。
期待しちゃだめ。
私には誠という旦那がいて、子供を産むという使命がある。
私だって子供は欲しいけれど、生まれた子供は愛されるのだろうか。
愛していない妻との子供は、誠の目にどう映るの?
義父の頼みだ。
しっかり果たさなければ。
誠の唇に私のそれを重ねる。
それでスイッチの入った誠は、私をベッドに押し倒した。
「織…」
首筋に触れる唇。
私は黙って〝子作り〟を終わらせた。
どんな感情も無意味なのだと気付いた。
誠がすやすや気持ち良さげに眠ったのを確認する。
だるい体を起こし、服を持ってトイレへ向かった。
鍵を閉めて、ポケットの中のものを取り出す。
小さなメモが入っていた。
そこには連絡先が綺麗な字で記されていた。
最後に〝連絡ください〟とだけ書いてあって、
その一言が忘れかけていた胸の高鳴りを呼び起こした。
電話しようかな…。
でも、私には夫がいる。
誠は私に関心はない。
大丈夫。
その番号にかけた。
『おかけになった電話番号は只今使われておりません』
…なんだ。
私のこと弄んだだけじゃん。
こんなにドキドキさせておいて。
ひどい人。
その紙を破り、トイレに流した。
私は舞岡誠の妻だ。
私の行動で、音楽業界を揺さぶることだってできる。
そんなことしてはいけない。
私は未来を担う子供を産むだけだ。
頬を軽く叩く。
しっかりしなきゃ。
ベッドに戻り、誠の唇にキスを落とし、眠りについた。
「ごめん。愛してる」
夢の中で誰かの囁きが聞こえた。
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